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11月9日のまにら新聞から

新聞論調

[ 733字|2009.11.9|政治 (politics)|新聞論調 ]

いかさま予言者再来−前大統領の出馬表明

 情報と教育の「格差」故、比の大衆はいかさま予言者らの催眠術にかかってしまう。予言者の代表格は、略奪罪で終身刑判決を受けながら、次期大統領選出馬を表明したエストラダ前大統領だろう。

 出馬を表明した演説で、元俳優の前大統領は「次期大統領選が人生最後のパフォーマンスになる」と語ったが、この言葉にこそ前政権の諸悪が凝縮されている。つまり、前大統領は2年半の在任期間中、「大統領」という配役を演じたにすぎなかった。深酒や賭博をやめず、本来果たすべき大統領としての職務をなおざりにした。

 問題はモラルなき職務態度だけにとどまらない。周囲を取り巻く政商らと癒着して、株の不正売買などで株価とペソを暴落させ、歴代政権の広報担当者らの抹殺にも関与したとされる。

 1998年の大統領選で、前大統領が掲げたスローガンは「パラ・サ・マヒラップ(貧困層のために)」だったが、その失政の付けは結局、貧困層へ回った。にもかかわらず、大統領特赦で終身刑を免れた前大統領は「エリート支配から民衆を救う真の改革者」のように振る舞い続けている。

 わたしは、アロヨ大統領のファンでは決してない。しかし、2001年の大統領就任後、ペソの対ドル為替相場は落ち着きを取り戻し、国内経済は前政権下を上回る堅調な伸びを示してきた。成長の果実が貧困層に行き渡っていないなどの諸課題は確かにあるが、現政権の不人気は、8年にも及ぶ在任期間の長さによるところが大きいだろう。対照的に、前政権が短命だったことは、われわれにとって幸いだった。この幸運を忘れ、前大統領の再当選を許すようなことがあれば、「台風オンドイ、ペペンを上回る厄災」が国を襲うと覚悟せねばならない。(3日・スター、ウィリアム・エスポソ氏)

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