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10月15日のまにら新聞から

ハロハロ

[ 717字|2012.10.15|文化 スポーツ (culture)|ハロハロ ]

 世界のどの街へ行っても、時間があれば、何となく訪れる場所がある。博物館と書店だ。とりわけ、裏通りの古本屋めぐりが楽しい。古書が醸し出す、あの独特の香りに包まれ、古ぼけた表紙を見ながら、面白そうな本を気ままに手に取る。時間の流れが止まり、気が付くと、2時間も経っていた。そんな経験がままある。フィリピンに来る前に、しばらく過ごしたメキシコやキューバでも、本屋通いをした。キューバでは、ハバナ大学から下宿に帰る途中、カリブ海を臨む坂道に、行きつけの古本屋ができた。

     ◇

 その古本屋には、歴史書のおびただしい在庫があった。ほとんどの本は店舗裏にある倉庫の高い天井に届くほど、野放図に山積みされていた。目当ての書籍は、店主に探してもらうほかない。2、3日たって行くと「やっと、見つけましたぜ」と、強欲な店主は本探しの苦労をひとくさり。次いで、希少本だと言って、平均月収20ドルのキューバ人が聞いたら、目の玉が飛び出るような値段をふっかけてくる。時間はたっぷりある。値下げ交渉を延々と続け、折り合いのついた本は買った。そんな古書がいま、自宅の書棚でほこりをかぶっている。

     ◇

 残念ながら、マニラでは本屋通いの趣味がかなわない。何しろ、本屋の数が少ないし、ベストセラーを除けば、品揃えも貧しい。試しにと、名門サント・トマス大学の書籍部と、フィリピン大学ディリマン校内の書店をのぞいてみた。

 やはり、食指が動く本は少なかった。聞くと、学生たちは教科書も参考書も、図書館から借り出し、まるごとコピーして読むのだという。これでは、本は売れない。出版文化も育たない。マニラは愛書家には、ちょっと寂しい街である。(竹)

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