首都圏マニラ市マラテ地区での邦人2人射殺事件を受け、マラテ地区で治安維持活動を行う事業者団体「MACRO」は20日夜、警察・構成バランガイ(最小行政区)との会議を緊急で開いた。長らく比日の犯罪捜査に積極的に協力してきたMACROのランゴメス会長はまにら新聞に対し、「今回の事件でホテル、旅行代理店などではキャンセルの嵐」とため息をつき、「日本のメディアは事件の性質を見極めもせず、むやみにマラテが危険だとのイメージを流布している」と危機感を示した。
同会長は、「今回の事件は無差別な強盗ではなかった。通常の拳銃強盗は、お金さえ渡せば手を出さない。だが今回は、いきなり頭を狙って撃っている。明らかに目的は殺しで始めから計画されていた」と強調。「これはとても『ディープ』な事件。誰かが指示を出しており、『ヤクザ』が関わっているかも知れないし、プライベートな問題かも知れないし、ビジネス上のトラブルかも知れない」との見方を示した上で、「無差別な拳銃強盗は今年1月以来マラテ地区では発生していない」と指摘。「強盗件数でいえばマカティ市より安全。われわれ事業者は安全のために送迎もしている。冷静に判断してほしい」と訴えた。
▽犯人の逃走劇
この事件を巡っては、国家警察のトーレ長官が命じた通報5分以内の到着ができたかどうかが明確になっていない。首都圏警察マニラ市本部のレメディオス派出所に同日着任したペニャフロア派出所長(警部)は、この件について「この事件は捜査中なため、コメントすることを許可されていない」とした。
ランゴメス会長は「事件発生直後にMACROのボランティアとバランガイの職員は現場に急行した。それに続き警察の白バイ2台が犯人を追いかけた」と当時の状況を明らかにした。
犯人は「(事件が発生した)マルバール通りから右折してアドリアコ通り、さらに右折してアロンソ通りに行き、左に旋回してジョージボコボ通りに入り、右折してマルバール通りに戻り、タフト通りに向かった。その途中で犯人のオートバイが壊れた。犯人は乗り捨て、警察がオートバイを見つけたときは、犯人は姿を隠しおおせていた」と解説した。
また、地区の治安維持の方法について、「怪しいオートバイはナンバープレートが付いていないなどの特徴がある。(通常バーの店先でガイドをしている)ボランティアには無線を持たせており、オートバイの型や色、運転手の服装などをバランガイに知らせ、バランガイでは監視カメラがその対象にフォーカスするようにし、警察が容易に特定できるようにしてある」と説明。「この方式を徹底して行うよう改めて指示を出した」とした。
ペニャフロア派出所長は邦人へのメッセージとして、「警察は常にこの地域に展開して目を光らせており、安全を守っている」と強調した。(竹下友章)