アギナルド初代大統領がカビテ州でスペイン支配からの独立を宣言して127周年を迎えた12日、首都圏マニラ市リサール公園で独立記念式典が開かれた。マルコス大統領は、ホセ・リサールやアンドレス・ボニファシオなど比独立闘争に命を捧げた英雄たちに言及した上で、「自由のためには戦わなければならない。そして自由の真の敵は、人々の不満・窮乏・福祉への無関心だ」と強調。「国民は責任を求めている。権力を乱用する者だけでなく、奉仕を怠る者にも責任を負わせる」と宣言した。
昨年は、「父祖が命をかけて防衛したものを守り、『ライン』を越えようとする勢力から国を守る」と、覇権主義的動きを強める中国を念頭に対外防衛を強調していた大統領だが、今年は中間選挙で目標を達成できなかったとを踏まえ、再出発した内閣・政府に成果を求めて発破をかけた格好。内政重視の方針が明確となった。
また大統領は「今日世界で起こっていることを見ると、フェイクニュース、誤情報、群集心理は、私たちが大切にしている生き方、文化、価値観を消し去ってしまう可能性がある。これはらわれわれの自由を脅かす疫病だ」と指摘。「私たちの同胞の中には、フィリピン国民の幸福ではなく、『他の者』の利益のために誤った信念を押し付けている者がいる」と述べた。
▽米国務長官が祝福
比の独立記念日に合わせ、米中は共に先の大戦での「勝利」の経験に結びつけて比との絆を強調した。
今年の独立記念日にはルビオ米国務長官も祝福の声明を出した。同長官は「今年第二次世界大戦の『勝利』80周年を迎え、比米は歴史に根ざす揺るぎない友好関係にある。最近の安全保障、エネルギー分野などでの協力の進展は相互に関係を重視しあっていることの反映だ」と強調。「南シナ海で共に国際法の堅守に取り組む中、米政府の比米相互防衛条約へのコミットは揺るぎない」と改めて宣言した。
中国の黄渓連大使は声明を自身のSNSに祝福のコメントを投稿。「第二次世界大戦で多くの教訓と犠牲と共に独立を達成した中国の国民として、独立の価値をあまりにも深く理解している」とした上で、「歴史を通じ、海外在住中国人がフィリピンを含めた外国の独立のために戦っことを知っていますか」と問いかけた。
日本占領後の1942年5月結成された在比華僑による抗日ゲリラ「比律浜華僑抗日遊撃支隊」や、共産系抗日ゲリラ「フクバラハップ」傘下で活動した華僑ゲリラ「第四八中隊」による抗日戦を指しているとみられる。
在比スペイン大使館はSNSで比独立記念日を祝福した上で、「われわれは友人として価値、課題、機会を共有している」とし、両国民の経済・社会開発に共に取り組む意思を表明した。遠藤和也駐比日本国大使は「日本はフィリピンと共に、平和、自由、民主主義の維持に尽力していく」と投稿した。
以前の比の独立記念日は、スペインに続き宗主国となった米国が1946年に自国の独立記念日に合わせて比の独立を承認した7月4日だった。それを故マカパガル元大統領が62年に大統領布告でアギナルドによる独立宣言日である6月12日に変更した。(竹下友章)