大統領府は22日、フィリピン各地で21日に開催された、治水事業の大規模汚職疑惑に対する抗議デモに、全国で8万4000人が参加したと発表した。首都圏マニラ市では、少数の人物が暴動を起こし、1人が死亡、100人以上の警察官とデモ参加者が負傷した。また、暴行などの容疑で200人以上が逮捕された。
保健省(DOH)によると、同市メンディオラのレクト通り沿いで抗議行動中に暴動が発生し、ホセ・R・レイエス記念医療センターに48人が搬送された。そのうち身元不明の男性1人には刺傷があり、搬送時に死亡が確認された。また、4人がすでに退院、2人が治療のため入院中とのこと。そのほか、警察官2人が軽傷を負い病院に搬送されたが、治療後にすぐ退院した。
首都圏警察本部(NCRPO)によると、デモ中の暴力事件で計131人の警察官が負傷した。重傷者も発生したが、現在は容体が安定し、治療を続けている。
内務自治省のレムリヤ大臣によると、大統領府に近いメンディオラの暴動で逮捕された未成年の容疑者は、大統領府の放火計画に参加していたという。同市エルミタ地区の教会で行進前に行われた集会では、演説者の1人が聴衆に対し、メンディオラへの行進とライターの持参を呼び掛けていた。ライターは、火炎瓶の点火用に持ち込まれたとみられている。
また、NCRPOによると、22日朝までにデモの最中に暴力的な行為をした224人が逮捕された。逮捕者には未成年も含まれる。NCRPOは、「逮捕者は、暴行、傷害、放火などの罪状で起訴される見込み」としており、暴動の指導者と扇動者の特定を続けている。マニラ市のモレノ市長が受け取った暫定報告によると、フィリピン系中国人と弁護士から資金提供を受けた元政治家が、暴動に関与したグループの背後にいる可能性があるとのこと。
▽行政関係者の姿勢
比国家警察(PNP)によると、今回のデモでは全国に警官約5万人が配備され、半数は首都圏に配備された。マルコス大統領は国家警察に対し、デモ参加者に対して最大限の寛容を示すよう指示。警備にあたった警官らは銃器や催涙ガスを携帯せず、火炎瓶の投てきを受けた場合に限り反撃したという。
レムリヤ内務自治相は、全国で行われた抗議デモを「おおむね平和的であった」と強調したうえで、暴動に参加した少数の人物を「テロリスト」と形容し、扇動罪で起訴される可能性を示唆した。(ロビーナ・アシド、宇井日菜)