フィリピン残留日本人2世の実態調査・国籍回復支援を行うNPO「フィリピン日系人リーガルサポートセンター(PNLSC)」は3日、外務省招へいによる残留二世帰国事業第1号に選ばれ、8月に日本に訪問していた竹井ホセさん(82)の国籍回復(就籍)を求める申し立てが、東京家庭裁判所(裁判官・佐々木清)に却下されたことを公表した。竹井さんの父が戦前の日本人移住者・竹井銀次郎であることは、日本に住む異母弟の協力のもとDNA鑑定で証明されていたが、却下の通知が先月16日に弁護団に送達された。弁護団は「納得できない」との竹井さんの強い意向を受け、9月29日に即時抗告した。
戦中生まれの竹井さんには国籍に関して父系主義をとっていた旧国籍法が該当。これまでの審判では、「父」の認定に父母の婚姻の事実や父による認知を要件とする法解釈をとっており、戦時下で母の妊娠中に父が消息不明となった竹井さんのケースはその要件を明確に満たしているわけではなかった。今回の申し立ては、DNA検査による血縁上の父子関係の立証により、旧来の解釈に挑むものだった。
東京家裁は、「申立人の父が日本人であると認めるに足りる資料もない」としているが、PNLSCは「DNA鑑定の結果を無視している」と指摘している。
PNLSCによると、竹井さんと同様のケースは他にも3件申し立てている最中。高等裁判所、最高裁判所での審理を通じて、旧来の法解釈をDNA鑑定技術が進歩した現代にふさわしいものに更新できれば、非嫡出の残留二世救済の道が開かれるが、その一方で、国籍回復を求める当事者の平均年齢はすでに83.5歳。比の平均寿命71.79%(2024年)を大きく越え、時間との戦いとなっている。(竹下友章)