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漁業・海域の平和呼びかけ 南シナ海でコンサート(上)

2025/6/5 社会
パグアサ島付近でラップを披露する「モロビーツ」のメンバー=5月28日、南シナ海パグアサ島付近で宇井日菜撮影

アティンイトは26日から5日間、南シナ海の連帯を呼び掛けるコンサートを実施

南シナ海の海洋権益主張に取り組む民間団体「アティンイト」は、 5月26日から30日の5日間、南シナ海パグアサ島付近で「平和のための海上コンサート」を開催した。イベントは、「南シナ海で暮らす漁師の権利を、音楽という平和的な手法で主張する」という趣旨のもと、計2回のコンサートと、南シナ海に関する教育セッションという二つの軸を中心に進行。コンサートに参加する著名人のほか、記者やボランティアなど168人が参加する大型イベントだった。

 イベントで使用された船は、全長115メートルの5000総トン船「キャピタン・フェリックス・オカ(KFO)」。普段は、比国内の海洋学生の教育現場で使う訓練用船舶で、今回は船員も含めて231名が乗船した。ホルヘ・デラクルス船長によると、KFOは1968年に教育船「青雲丸」として進水し、日本の海洋学生の教育に利用されたのち、1997年11月に比へ譲渡されたという。船内設備には日本語が散見され、当時の設計図や日本人生徒の写真も飾られていた。

 26日、パラワン島エルニドで団体幹部とアーティストが会見を行ったあと、エルニド沖に停泊するKFOで午後6時から1回目のコンサートを開催。砂浜とKFOを往復する小型ボートで参加者の移動が完了すると、5カ国9組のアーティストが音楽を奏で、夕日を背に音楽と食事を楽しんだ。比の著名アーティストのノエル・カバンゴン氏も参加し、いぶし銀の歌声で聴衆を魅了。参加者とともに歌う場面もみられた。また、エルニド近辺の17のバランガイ(最小行政区)から漁師が集い、それぞれの漁船から音楽を楽しんでいた。

 KFOは27日午前2時ごろ、船員も含め総勢216人を乗せてパグアサ島へ出発した。この日は南シナ海に関する教育セッションが行われ、ニノイ・コリー・アキノ財団のキコ・アキノ氏と、比人漁師のカドドイ・バロン氏が話し手として参加した。キコ氏は、地域から国レベルの幅広い連帯の重要性を話したほか、より真剣で一貫性のある交渉を活動団体に期待した。カドドイ氏は「これは平和のためだけではなく、漁師のためのコンサートだ」と話し、南シナ海で生活する500人以上の漁師の権利と資源を守るため、中国の圧力に屈さない姿勢をみせた。

 イベント3日目の28日、KFOはついにパグアサ島に接近。午後1時より2回目のコンサートが開催され、エルニドのコンサートから続けて乗船した5組のアーティストが参加した。会場は、操縦室のすぐ下に位置するトレーニングルームに、アティンイトのロゴ入りの旗を張り巡らして展開。アーティストは進行方向を背にして楽曲を披露し、参加者とひしめき合いながら音楽を楽しんだ。

 午後2時頃にKFOはパグアサ島から2~3カイリ離れた地点に到着すると、参加者が歓声をあげた。同時に、船の左前方から比の伝統的な小型漁船「バンカ」11隻の船団と、比沿岸警備隊のゴムボートが接近し、コンサートを一時中断して補給作戦を開始。KFOからバンカに乗る地域の漁師へ、10リットルの燃料ボトル22個の受け渡しに成功した。その後再開したコンサートも滞りなく終え、すべての計画の実施に成功した。

補給作戦終了後、KFOはマニラへの帰路につき、30日午後2時ごろに雨季を迎えたマニラ港へ帰ってきた。

▽海警船の執拗な追跡

 27日のエルニド出発からマニラ帰港に至るまで、中国海警局(CCG)の船舶がKFOを終始追跡した。27日朝に確認された船舶は、CCG最大級の船舶CCG3306と、CCG21549。同日午後5時ごろ、2隻はそれぞれKFOの右舷4・28カイリと、後方4・6カイリを航行。CCGの船舶は位置を変えながらKFOの追跡を続け、途中民間漁船の近くを横切る場面もあった。比沿岸警備隊は、近頃相次ぐCCGの妨害をふまえ、「BRPメルチョラアキノ」と「BRPマラパスクア」の2隻を派遣し、KFOを護衛した。

 パグアサ島に最も接近した29日には、追跡船が3隻に増えたほか、パグアサ島近辺に中国海上民兵船22隻が停泊した。さらに、コンサート中にCCGからKFOに向けて複数回の交信があった。足元から聞こえるコンサート会場の熱狂と対照的に、操縦室ではCCGの交信音声が冷ややかに響いていた。午後1時50分から2時頃には約4回相次いで交信があり、各メディアの記者が緊張した面持ちで交信を録音していた。操縦室のレーダーには、KFOの安全圏を示す円形の内側に侵入するCCGの船舶が確認された。

 報道陣と対照的に船員は落ち着いた様子で、報道陣にレーダーの数値を説明したり、ジョークを言い合っていた。エルニド出航前の取材では、デラクルス船長は「パグアサ島にはたどり着けない」という予測を示し、安全をつかさどる立場として現実的な見方を示していた。それでも、船長は冷静かつ穏やかに指令をだし、船員は数字を復唱してハンドルを回し、パグアサ島近辺の地図に定規をあて、安全な航路を随時割り出していた。堅実で緩やかな船員の仕事が、コンサートの安全な遂行を静かに支えていた。(宇井日菜)

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