「前大統領の謀略から逃れた」 日本逃亡の元市長が証言
ドゥテルテ前大統領に麻薬関与容疑をかけられ7年亡命した市長が帰国
ドゥテルテ前大統領に麻薬取引の疑いをかけられ日本を経て米国に亡命していたジェド・マビログ元イロイロ市長が7年の亡命生活を経て今週、フィリピンに帰国した。マビログ氏は19日、下院公聴会に出席。公聴会で同氏は、ドゥテウルテ氏の政敵として知られるフランクリン・ドリロン元上院議長(野党・自由党)、2016年の大統領選でドゥテルテ氏の対立候補だったマール・ロハス元内務自治相の2人について、違法取引に関与したと証言するよう強要する謀略があったと述べた。19日付の英字紙インクワイアラーなどが報じた。
自身に降りかかった麻薬取引疑惑に「命の危険を感じた」というマビログ氏は、日本での会議出席の機会に乗じて2017年8月に家族と逃亡。日本滞在中、ベルナルド・ディアス警視正から電話をするよう連絡を受け、指定された番号に電話をしたところ、電話の相手は当時警察長官を務めていたロナルド・デラロサ氏(現上院議員)だった。デラロサ氏はそのとき、マビログ氏に同情的な姿勢を示し、「あたなが麻薬取引に関与していないと信じている」と伝えてきたという。
マビログ氏は帰国を決意しかけたが、デラロサ氏の電話の直後に別の人物から電話があり、「いま帰国すると命が危ない。(ドゥテルテ氏の政敵)2人を陥れるための『指差し人』になることを強要される」と警告され、思いとどまったという。
マビログ氏は当時、ドゥテルテ前大統領から「西ビサヤ地方の麻薬取引の守護者」だと名指しで批判された。マビログ氏は前政権下で、汚職防止法違反などで告訴されたが、麻薬取引に関連しては訴追されていない。今回の公聴会でも改めて自身の麻薬取引との関与を否定した。
ドゥテルテ前大統領が麻薬取引の容疑で政敵を排除した例としては、レイラ・デリマ前上院議員への長期収監が有名。ノイノイ・アキノ政権で司法相を務めたデリマ氏は麻薬戦争批判の急先鋒としても知られていたが、前政権期に自身が麻薬取引に関与したとして2017年2月に逮捕され、保釈なしで長期勾留を受けた。欧州議会や国際人権NGO「アムネスティー・インターナショナル」は、政治的理由による収監であるとして同氏の即時釈放を求め続けた。
前政権が末期に差し掛かった2022年4月以降、デリマ氏に不利な証言をしていた被告らが「脅されていた」などとして相次いで証言を撤回。23年11月に6年半ぶりにデリマ氏は保釈された。今年6月までに、同氏は全3件の訴追で無実と判断された。(竹下友章)