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5月5日のまにら新聞から

沈黙は「なかったこと」でない ある少女の話

[ 640字|2024.5.5|社会 (society)|新聞論調 ]

 これは実母の内縁の夫により尊厳を奪われ腐敗行為の犠牲となった11歳の少女レティシアの話だ。

 蛮行はレティシアの母が家を空けている時に起こった。内縁の夫ナルド(50)は、やめるよう懇願し泣き叫ぶレティシアにナイフをちらつかせ、母に話せば2人とも殺すと脅し、無理やり性行為を強要した。性虐待はその後数カ月にわたり続いた。

 5カ月後、レティシアは妊娠した。母を含め近隣住民もナルドを疑い、問い詰めたところ、ナルドは罪を認めた。レティシアが男の子を出産したのち、母が警察に通報しナルドは逮捕。欲望に駆られ、内縁の妻のわずか11歳の娘を脅迫し、性行為を強要したとして、ナルドはレイプ防止法(共和国法8353号)違反罪で起訴された。

 ナルドは逮捕前、「(このような罪を犯した)自分を殺してくれ」と言っていたという。しかし、裁判では一転して罪を認めず、でっち上げのアリバイを口走った上、レティシアの証言は信用できないと反論した。

 しかし、地裁はナルドに終身刑を宣告、賠償金5万ペソと精神的苦痛に対する慰謝料1万ペソの支払いを命じた。ナルドは上訴したが、最高裁は地裁判決を全面支持した上で、賠償金をそれぞれ10万ペソに増額した。

 犯行の日付や回数、状況の記憶があいまいなことや、命を奪うと脅かされすぐに通報できなかったこと、また、明らかな権力関係があり抵抗できなかったこと――いずれも性被害者の証言や告発を疑う要因になってはならない。(3日・スター、ホセ・シソン氏著書より)

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