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3月25日のまにら新聞から

補給船に「深刻な損傷」 航行不可に、職員も負傷

[ 1955字|2024.3.25|社会 (society) ]

南シナ海セカンドトーマス礁で、中国海警局・民兵船が再度フィリピンの補給任務を妨害。約1時間にわたる放水砲の発射で、比補給船が航行不能に

(上)両側から放水砲を受ける比補給船(中央)。(下)小型艇を用いて職員交代と補給が行われた座礁艦BRPシエラマドレ=23日、比国軍提供

 比海軍と比沿岸警備隊(PCG)は23日午前に南シナ海南沙諸島アユギン礁(英名セカンドトーマス礁)で実施した定期補給任務で、中国海警局と中国海上民兵からの妨害を受けた。比海軍がチャーターした補給船は、海警船2隻から約1時間にわたり放水砲の発射を受けた結果、「深刻な損傷」を負い航行不能の状態に陥った。また、乗船していた比職員が負傷した。補給任務で職員が負傷したのは5日に行われた前回の補給に続き2回目。比側は、比海軍の詰め所としてアユギン礁内に座礁させてある旧式揚陸艦(BRPシエラマドレ)から小型艇(複合型ゴムボート)を派遣し、配備職員の交代と必要物資の補給を完了させた。同日、比政府西フィリピン海国家タスクフォースが公表した。

 今回用いられた補給船は5日の補給任務で海警局の妨害に遭い任務を遂行できなかった「ウナイザメイ4」。それを日本供与の44メートル級巡視船「BRPシンダガン」、「BRPカブラ」(各メディアの記者同乗)の2隻が護送し、海軍艦も2隻後方で待機した。比はこれまで、補給船2隻体制で補給任務を行い、それに対し中国側は、「食料品などについて比の補給を一部認める合意がある」との主張の下、「人道上の配慮による特別手配」として1隻のみ補給を容認することが続いてきた。今回はこれまでと異なり補給船1隻での任務が試みられ、その1隻が中国からの妨害に遭った。

 ▽護送船と分断、両側から放水

 午前4時ごろ、海警局船は海上民兵船と共にPCG船と比補給船に対し、危険操船を開始。6時8分には海警局の54メートル級巡視船「海警21551」がウナイザメイ4の左舷から船首をすり抜ける至近距離での危険操船を実行。7時9分には、ウナイザメイ4の進路を通過した海警船が、直後に船尾側に逆進することで比補給船の船首に最接近。衝突ニアミスの事態が発生した。

 午前7時20分、海警21551および民兵船2隻(00036号、00314号)が、補給船を護送していたPCGのBRPカブラの周囲を旋回し妨害。BRPカブラは補給船から分断された。7時59分、102メートル級巡視船「海警5201」らが比補給船に対し、放水砲の発射を開始。さらに8時38分から、海警船2隻がウナイザメイ4に両側から放水砲の直接発射を始めた。同補給船は8時52分に重度の損傷を受け、自力航行不能になった。乗船していた比職員も負傷した。

 44メートル級BRPシンダガン、BRPカブラは海警船・民兵船の妨害を振り切り、補給船の支援に急行。負傷した職員をBRPカブラ上に運び、医療措置を施した。

 比側は補給任務を遂行するため、BRPシエラマドレから複合型ゴムボートを派遣し、交代で配備される職員6人と必要物資を移し替えた。それに対し、海警局・海上民兵船は小型艇を用いて北西の礁湖の入口にブイの障害物を配置し、妨害しようと試みる。比側はそれをかわし、午前11時59分に補給・職員交代任務を完了。午後12時9分にPCG船は航行不能になった補給船をえい航し、アユギン礁近海を離れた。

 ▽「火遊びのツケ払う」と警告

 西フィリピン海国家タスクフォースは同日、声明で「中国が組織的・継続的な方法で違法・無責任な行動をとり続けていることは、平和・対話・国際法順守という同国の主張を、自らの行動で否定しているに等しい」と中国を非難。「比は脅威や敵意によって、アユギン礁を含めた比の排他的経済水域(EEZ)・大陸棚における権利の行使を抑止されることはない」とし、中国に対し「国際社会のメンバーとして、責任があり信頼の置ける行動をとる」よう要求した。さらに今回の事件について、アニョ国家安全保障担当大統領顧問が官房長官・安全保障関係閣僚会合を25日に開くよう政府に上申したことを明らかにした。

 一方で、中国海警局の甘瑜報道官も声明を発表。同報道官は「フィリピンは前回の物資補給からわずか18日後に、再び約束を破って巡視船2隻、補給船1隻を中国の仁愛礁(アユギン礁の中国名)近隣海域に侵入させ、軍拠点として不法に座礁させた老朽艦に建築材料を運ぶという正常とはいえない補給を試み、さらにこれに乗じて権利侵害と挑発行為を行い、一方的に南海(南シナ海)の平和と安定を破壊しようとした」と比側を批判。「中国側の度重なる制止警告と航路管制にもかかわらず、強引に侵入した比補給船に対し、中国海警局は法に基づき規制、阻止、排除を実施した。これらの措置は合理的かつ合法的で、専門的な規範に則っている」とし、その上で「海警局は常に厳戒態勢で、国家の領土主権と海洋権益を断固として守っていく。火遊びをする者は自らに恥をもたらすだろう」とけん制した。(竹下友章)

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