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3月29日のまにら新聞から

ICCが上訴棄却 大統領は「絶縁」宣言

[ 1100字|2023.3.29|社会 (society) ]

超法規的殺害で前大統領らへの捜査中止を求める比政府の上訴をICCが棄却

 国際刑事裁判所(ICC)の上訴裁判部は27日、ドゥテルテ前大統領の大統領期・ダバオ市長期の麻薬撲滅政策下で発生した超法規的殺害に関する捜査を承認したICC決定に対する比政府の上訴申し立てに対し「比政府は捜査を中断すべきいかなる理由も提示できていない」として棄却する決定を下した。

 これで比から捜査中止を求める方途は尽き、国内捜査を拒絶しながら、進展を待つのみとなる。捜査を担当するICCのカーン主任検事はドゥテルテ前大統領も含め政府高官を人道に対する罪で捜査することを明言しており、ロシアのプーチン大統領に続き、ドゥテルテ前大統領にもICCから逮捕状が出るという展開も見えてきた。

 比政府は13日にICC上訴裁判部に捜査を一時中止するよう申し立てていた。ゲバラ訟務長官らは①ICC予備審査部が犯罪の疑惑がある時期に比が締約国であったことをもって、比が脱退したにもかかわらずICCの根拠条約であるローマ規程上の「付随義務」が適用されると認定されたのは法解釈上の誤りである②捜査着手手続きに関するローマ規程18条で検察側が果たすべき立証責任を逆転させている③「当該国が捜査または訴追を行う意思・能力がない場合を除き、事件が当該国により現に捜査され、訴追されている場合は捜査要請を受理しない」ことを定める同規程17条に違反している――などの理由を挙げていた。

 ICC上訴裁判部はそれに対し「上訴は上訴裁判部が別段の命令を発しない限り手続き停止の効力を有しない」というローマ規程82条を引き、「上訴裁判部が捜査手続き中止を命じるのは、回復不可能な状況を招く危険のある場合などに限られる」と指摘。「比政府の主張は手続き中止命令を出すための理由を提示できていない」とし、比政府の上訴を棄却した。

 ICC第一予審裁判部は21年9月、捜査開始を承認。それに対し比政府は同年11月に国内捜査実施を理由に捜査中止を要請、それを受け、捜査は一時延期したが、検察は22年6月に捜査再開許可を申請。今年1月にICC予審裁判部は捜査再開を正式に承認していた。

 

 ▽ICCとは「絶縁」

 マルコス大統領は28日、記者団に対し「これ以上上訴する道は残っておらず、政府としてICC側にこれ以上なにも働きかけることはない。これからICCとはどんな連絡、コミュニケーショを取ることもない」と述べ、「絶縁」を宣言した。

 その上で「比の主権への干渉、実質的に主権への攻撃だとみなされるICCの管轄権に関する疑問を考慮すると、ICCに協力することはできない」とし、捜査に協力しない旨を改めて強調した。(竹下友章)

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