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1月21日のまにら新聞から

「かなりの希望に満ちている」 JICA理事長が記者会見

[ 1284字|2023.1.21|社会 (society) ]

BARMM発足に向けた移行プロセス4年目でJICAの田中明彦理事長が比で記者会見

記者会見を開いた国際協力機構(JICA)の田中明彦理事長=19日午後4時過ぎ、首都圏マカティ市のJICAフィリピン事務所で岡田薫撮影

 国際協力機構(JICA)の田中明彦理事長が19日、首都圏マカティ市のJICAフィリピン事務所で記者会見を開いた。同理事長は、バンサモロ・イスラム自治地域(BARMM)の2025年発足に向けた移行プロセスが4年目を迎えるに当たり、前日にミンダナオ地方コタバト市を訪問していた。それを踏まえて同理事長は、バンサモロ暫定自治政府(BTA)が進める移行プロセスの行方が「かなり希望に満ちている」との見方を示した。

 田中理事長は18日、BTA議会で外国人初となる演説を行い、同理事長はバンサモロの平和と開発プロセスへのJICAの継続的なコミットメントを再確認した。また、選挙法、地方自治法、歳入法の起草を含む、良い統治のためのBTAによる基盤構築の努力を評価した。

 BTAのムラド・イブラヒム暫定首相やアブドゥルラオフ・マカクアBTA上級大臣、オマール・セマBTA議会副議長らとも会見し、各大臣が出席するハイレベル協議も行った。BTA議会も田中理事長とJICAによるBARMM地域との積極的な協力関係を認識・評価・表彰するとの決議文を採択していた。

 初めて理事長に就任した2012~15年の間に比を4度訪れ、最初の訪問先はコタバト市だったという田中理事長は、記者会見の中で、初めてモロ・イスラム開放戦線(MILF)のエスコートを受けて訪問したMILF本拠地やコタバト市の発展ぶりを比較。当時同市は「落ち着いた印象だったが夜がとにかく真っ暗だった。2015年に戻ると、夜はやや明るくなり、車も増えていた。今回は人々の活動で満たされ、夜でも非常に明るく、車の多さにも目を見張った」と発展ぶりを語った。

 ▽議会は真剣に議論

 一方で田中理事長は、新型コロナ禍でMILFの戦闘員を退役させるプロセスに遅れが生じ、当初の移行時期に設定していた2022年のBARMM議員選挙も25年へと延期されたと説明。そうした中でも「BTA議会では昨日の昼にバンサモロ開発計画が議会に提出され、受け入れられたことをムラド首相づてに聞いた」。そして「議会における議論の真剣さが伝わってくる。マルコス大統領のリーダーシップの下、比政府もプロセスを最後まで見守る心構えを示している」とし、移行プロセスの先行きが「かなり希望に満ちている」と見通しを語った。

 また、正確な時期は未定としながらも、今年中にBTAメンバーらからなる代表団を日本に招待し、「日本の国会運営や議会政治における課題などが、代表団に少しでも役に立てば」との計画を明かした。

 ▽人権状況にも回答

 さらに、主にドゥテルテ前政権下で国際社会からも問題視されてきた超法規的殺人など、現在も国連などで取り沙汰される比の人権状況全般について、田中理事長は「明確な返答はできないが、人権推進には大賛成だ」と話した。

 これまで日本の一部環境NGOや人権団体からは、比への最大の政府開発援助(ODA)供与国である日本政府から、比の人権状況改善に向けた積極的な働きかけが必要なのではといった声も聞かれていた。(岡田薫)

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