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11月28日のまにら新聞から

「最後の1マイルまでワクチンを」 比に医療機器供与 日本政府

[ 1142字|2022.11.28|社会 (society) ]

首都圏ケソン市ラングメディカルセンターで25日、日本から比保健省への医療機器供与式典が開かれた

日本政府による医療機材引き渡し式の模様。左から3番目がベルへイレ保健相代行、4番目が坂本威午JICA比事務所長、5番目が在比日本国大使館の二瓶大輔公使=25日、竹下友章撮影。

 首都圏ケソン市にある国立ラング・センター・オブ・ザ・フィリピンで25日、日本から比保健省への医療機器供与式典が開かれた。国際協力機構(JICA)がコロナ禍対応として無償供与する計1億9800万円の「新型コロナウイルスコールドチェーンおよびロジスティクス支援プロジェクト」は今回で完了した。また、日本政府が実施する無償協力「経済社会開発計画」=2020年締結、総額20億円=の一環で供与される移動式X線撮影装置の最初の1台も同時に引き渡された。

 JICAが供与したのは、ISUZU製の保冷機能付きトラック2台、配送車両2台、100時間保冷可能な保冷容器600個。比保健省によると、容器1個でファイザー製ワクチンなら約5800回分を運ぶことが可能。

 これまで比政府のワクチン国内輸送は食品などを冷凍輸送する民間業者に頼っていたが、コロナ禍で政府の保冷輸送システムを持つ方針を決定。比政府は昨年3月に日本政府に支援を要請し、翌4月に事業が採択。ワクチンへのアクセスが限られる離島など僻地(へきち)に輸送できるよう、小回りの効く車両と長期保冷可能な容器が供与機材に選ばれ、8月に保健省職員らへの技術講習を行った。

 昨年からの円借款を含むコロナ関連支援総額は今年10月までで約810億円に上る。

 JICAフィリピン事務所の坂本威午所長は「今回の保冷機材供与は接種事業を促進し、経済再開を加速させるために行う『最後の1マイルまでの支援』の一部」と説明。「よりぜい弱な人々や遠隔地の住民にワクチンを提供するため、機材を適切に運用し、十分に活用してほしい」と述べ、日本の国税を財源とする同事業の有効利用を保健省に求めた。

 ▽現代の課題に対応

 一方、2020年に締結された無償資金協力「経済社会開発計画」では、今回供与された移動式X線撮影装置のほか、CTスキャナー(64スライス)、感染症患者を収容する簡易陰圧ブース、可搬型超音波画像診断装置など、最新の機材を供与する。機材提供を受ける病院は、北はパンパンガ州から南は比最南端のタウィタウィ州まで全国15カ所。

 越川和彦駐比日本国大使の代理として式に参加した二瓶大輔公使は「日本政府は保健省傘下の病院に医療機材を60年にわたり提供してきた」と説明。今回の医療機材供与は「マルコス現政権が優先課題の一つとする医療保健体制の向上にとっても極めて重要だと信じている」と述べた。

 供与される予定の機材には血液透析器10機も含まれる。東京大学の中西徹教授は、比の貧困地区の健康問題は飢餓から糖尿病など生活習慣病にシフトしていることを指摘しており、現在の比の発展段階における保健課題に合致した支援といえそうだ。(竹下友章)

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