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6月27日のまにら新聞から

「政府調査は机上の検討のみ」 ICC主任検事が捜査再開申請

[ 1146字|2022.6.27|社会 (society) ]

ICCの主任検察官が麻薬戦争下の超法規的殺害問題への調査再開を申請した

 国際刑事裁判所(ICC)のカリム・カーン主任検事は25日までに、昨年から捜査を一時中断していた現政権による麻薬撲滅政策下の超法規的殺害について「比司法省がICCに提出した内部調査報告は机上の検討に過ぎない」とし、ICC予備裁判部に対し捜査再開を正式に申請したと発表した。比政府は昨年11月にこの問題の調査を比政府に委任するようICCに要請。ICCはそれを受け入れ捜査を一時中断していた。25日の英字紙スター電子版など各紙が報じた。

 カーン主任検事は声明で「再調査自体は司法省傘下の国家捜査局(NBI)に委ねられており、司法省が設置した内部調査委員会は独立の権限を有していない」と指摘。「比政府はゲバラ司法相が2020年に国連人権理事会に提出した同委員会設置などの再調査の努力を強調するが、そのタイミングや動機において疑問を拭えない」と述べた。

 また、比政府がICCに提出した報告書に記載されている302件の捜査中の容疑者殺害については「殺害された容疑者の死因と手続き上の不備が記載されているだけで、内部調査委員会がどのような方法で調査を行ったのか説明がない」と問題を提起。「国際刑事裁判所ローマ規定第18条2項の規定する当事国への捜査委任条項に該当せず、これ以上ICCが捜査を中断することはできない」とした。

 その上で同主任検事はドゥテルテ現大統領を名指しし「大統領はじめその他の政府高官は超法規的殺害を勧め、支援し、執行したとの報告がある」とし、容疑は直接手を下した者だけでなく、より高位の職にも及ぶと明言した。

 

 ▽大統領府は「憤激」

 カーン主任検事の捜査再開請求を受けアンダナー大統領報道官代行は25日、「主任検事の請求に対し何度でも『憤激の意』を表す」と表明。「ドゥテルテ政権は合法的な麻薬捜査のなかで発生した容疑者死亡事案について透明性のある再調査を実施した」とした。

 一方、国際人権NGO「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」のマリア・ビグノイ上級顧問は「ICCの捜査再開は説明責任向上へのブースターショット(追加接種)となる」とし、歓迎の声明を発表。「遺族は補償されず、責任者が何の責任も負わない中、比政府はこの『犯罪』に対し真剣に取り組んでこなかった」と指摘した。

 国際人権NGO「アムネスティ・インターナショナル」のブッチ・オラノ比支部長は「次期政権はICCの捜査に協力するとともに、犠牲者遺族の身の安全の確保に務めるべきだ」とし、ボンボン・マルコス次期大統領への捜査協力を訴えた。

 現政権下における捜査中の容疑者殺害件数は、政府統計でも2021年末時点で6221人。複数の人権団体が実際の殺害件数を3万人近くと推計している。(竹下友章)

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