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2月2日のまにら新聞から

ドゥテルテ政権閣僚らへの制裁要請 米議会議員24人が米国務長官に

[ 1398字|2022.2.2|社会 (society) ]

超党派の米議会議員24人が、ブリンケン米国務長官とイエレン米財務長官に対し、ドゥテルテ政権の閣僚ら5人への制裁求める

 民主党のスーザン・ワイルド下院議員をはじめ、超党派の米議会議員24人がこのほど、ブリンケン米国務長官とイエレン米財務長官に対し、ドゥテルテ政権の閣僚など深刻な人権侵害に関わった個人への制裁を行うよう求める書簡を送った。現役の閣僚や元国家警察長官、国軍関係者ら5人の名を挙げて、的確な制裁措置で責任を取らせるよう要請した。

 同書簡によると、フィリピン人権国際連合(ICHRP)やアムネスティ・インターナショナル、ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)などの報告を参考に、現政権下での反体制派や野党指導者、聖職者、労働組合やその指導者、人権擁護者、ジャーナリストらを標的とした広範な嫌がらせや「赤タグ付」、恣意的な投獄、拷問、暗殺が記録されていることを挙げた。また、国際刑事裁判所(ICC)が「麻薬戦争」での人道に対する罪の可能性について調査を開始していることにも触れた。

 議員らは「こうした極端な侵害の背後にいる者が免罪符を与えられるべきではない。米国が世界の人権と自由の繁栄のために真に立ち上がるというのであれば、フィリピンの置かれた状況を見過ごすことはできないはずだ。グローバル・マグニツキー人権説明責任法(2016年制定)の利用を強く求める」と主張している。

▽名指しされた閣僚ら

 今回制裁を加えるべき人物として名前が挙がったのは①エドゥアルド・アニョ内務自治相②デルフィン・ロレンサナ国防相③アントニオ・パルラデ元国軍中将④ヘルモゲネス・エスペロン大統領顧問(安全保障担当)⑤デボルド・シナス元国家警察長官――で、いずれも過去に人権侵害の記録を抱えていると指摘した。

 アニョ内務自治相については、国軍時代の2007年に自身の部隊が農民人権活動家のジョナス・ブルゴス氏を誘拐し、失踪したままとなっている事件や、2015年にミンダナオ地方ダバオ市で先住民3人が殺害された事件への関与、民間人を対象に爆撃や攻撃を行った責任があるとした。

 ロレンサナ国防相については、現政権下で17年5月〜19年末までミンダナオ島で敷かれた戒厳令の監督者だったほか、HRWといった国際人権団体への「赤タグ付」を行ったという。

 パルラデ元中将については、共産主義勢力との紛争を終わらせる国家タスクフォース(NTF─ELCAC)の広報担当を務めた間、政府に批判的な立場の個人や団体を攻撃したり、フェイクニュースを流し、「共産主義者」と断定する赤タグ付を行ったとされる。

 エスペロン大統領顧問についても、アロヨ政権下で人権活動家を含む民間人数百人の殺害や強制失踪、拷問に関わったとされている。

 シナス元国家警察長官も、21年3月に南部ルソン地域での一斉捜査で9人の労働組合指導者や人権活動家が殺害された「血の日曜日事件」を指揮していたとされる。

 人権団体カラパタンは31日の声明で、米議会議員の動きに歓迎を示した上で「ドゥテルテ政権の終わりが近づいても、正義が実現されない機能不全の国内救済メカニズムの中で、何千もの被害者とその身内、コミュニティーの苦しみが消えることはない」と述べた。「大統領とその一派は、マルコス家のような同盟者や自身の娘(サラ氏)の選挙当選を通して、説明責任から逃れようとしており、状況はますます憂慮すべきものとなっている」とも警鐘を鳴らした。(岡田薫)

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