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5月7日のまにら新聞から

効果は32カ国で実証済み 新型コロナでのイベルメクチン投与

[ 1531字|2021.5.7|社会 (society) ]

八木澤守正・北里大客員教授に聞く。「使用が進まないのは製薬会社の利害と推察」

6日、北里大からリモートインタビューに応じる八木澤守正氏=スクリーンショット

 北里大(東京都港区)の大村智特別栄誉教授(2015年ノーベル生理学・医学賞受賞者)が開発した抗寄生虫薬イベルメクチンの新型コロナへの効果について、大村氏と連名で論文を発表している同大の八木澤守正客員教授が6日、まにら新聞のインタビューに応じ、「既に世界32カ国の治験で効果は実証済み」とした。また、ドイツでも治験が始まる予定であることや、爆発的感染が続くインドではイベルメクチンを使用している州だけが感染者増が抑制されていることも指摘した。(聞き手は石山永一郎)

 ─イベルメクチンの新型コロナへの効果は。

 世界32カ国で治験や使用が既に行われ、新型コロナの予防、治療のいずれにおいても顕著な効果があることが実証されている。エジプトでは医療従事者や濃厚接触者の感染がイベルメクチン服用で91・3%減少、アルゼンチンでは同95・2%減少した。治療では、軽症・中程度の患者に使用したパキスタンでは90・2%の患者でウイルスが消失、重症患者に使用したバングラデシュでは60・7%が早期に改善。使用しなかった患者とはいずれも有意な差がはっきり見られている。

 インドでは、これまで北部のウッタルプラデシュ州のみが州独自の判断でイベルメクチンを積極的に住民に配布してきた。最近のインドでは爆発的な感染拡大が起きているが、人口比で見るとウッタルプラデシュ州の感染増加の度合いは小さい。ペルーではビスカラ大統領がイベルメクチンの使用を推進してきたが、昨年11月に辞任、政府のイベルメクチンへの対応が変わったとたんに感染が急増している。イベルメクチンへの関心は、ワクチンがなかなか入手できない途上国で強く、治験や使用も途上国で行われてきたが、最近ドイツのバイエルン州が予算を得てイベルメクチンの治験を始めようとしている。

 ─なぜ抗寄生虫薬が新型コロナに効果があるのか。

 イベルメクチンはHIVやデング熱ウイルスが自己複製するため細胞核内移行をする際の酵素を特異的に阻害することが分かっている。さらにインフルエンザを含む多種多様なウイルスの複製を阻害することも分かってきている。ウイルスに対するイベルメクチンの効果は、20世紀最大の福音と言われる細菌に対するペニシリンの恩恵と比較して語られることになるかも知れないと思っている。

 ─ではなぜ、米食品医薬品局や世界保健機関(WHO)がイベルメクチンの使用を推奨しないのか。

 ファイザー製のワクチンを日本が購入した値段は1回分で2700円ほど。しかし、イベルメクチンはその10分の1ほどとはるかに安く、新型コロナに対する予防や治療の有効性を認めるとワクチン製造会社は開発費を回収できなくなる。製薬会社の利害が絡んでいると推察している。日本政府も米国やWHOの判断に追随している。

 ─イベルメクチンに副作用はないのか。比では大量に飲むと肝臓障害を起こすとの報道もあった。

 適用量を超えて飲めばどんな薬も体に良くない。イベルメクチンの副作用には下痢などがあるが、既に世界で37億回以上使用されており、安全性は確認済み。新型コロナ予防用に服用する場合、2週間おきに飲むなら1回12ミリグラムが推奨されている。

 ─比では大統領の指示で治験が始まろうとしている。

 喜ばしいこと。私たちも新たな治験結果を得られることを心待ちにしている。

 やぎさわ・もりまさ 1942年生まれ。北海道大卒。博士号取得後、77〜82年、協和発酵研究所研究員。米ウィスコンシン大客員研究員、財団法人微生物学研究会客員研究員などを経て、2008〜13年、慶応大薬学部教授。13〜21年同学部共同研究員。21年から現職。

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