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1月20日のまにら新聞から

国防省が比大との協定を破棄 警察や国軍の大学への介入に懸念

国防省はフィリピン大との間で結ばれ、国家警察や国軍の大学内立ち入りを禁じてきた協定を一方的に破棄

[ 1143字|2021.1.20|社会 ]
政府の人権侵害への抗議デモに参加者する学生ら=11月30日、首都圏ケソン市のフィリピン大で岡田薫撮影

 国防省はこのほど、31年前にフィリピン大との間で結ばれた、大学の要請なく国家警察や国軍兵士らが大学内に立ち入ることを禁じてきた協定を一方的に破棄した。ロレンサナ国防相は、「自らの意志であり、ドゥテルテ大統領の指示があったわけではない」と説明するが、共産勢力の撲滅を目指すドゥテルテ政権が大学の自治や学問の独立性などに直接干渉する可能性があり、教員や学生らはもとより、市民団体や議会などからも強い反発が予想される。

 ロレンサナ国防相が15日、ダニロ・コンセプション比大学長に宛てて「共産党や新人民軍(NPA)の活動から国家、そして比大の学生の安全を保護するため、既存の合意は破棄する時が来た」との手紙を送付したことが、18日に分かった。「本日(15日)をもって、国防省と比大との間で1989年6月30日に締結された協定は破棄されたことを通知する」と記されていたという。

 同相は破棄について、警察や軍をキャンパス内に駐留する意図はなく、「私たちの軍隊と警察は、若者に手を差し伸べ、国や社会についての新たな視点を喜んで提供する」と説明している。

 しかし、比大側は猛反発している。19日には学内で、政党カバタアンや学生、教員も参加する集会が開かれ、各学生組織や人権団体が、権力による干渉がない学問の自由や批判精神、教育の自由の維持を呼び掛けた。

 集会にも参加したコンセプション学長は「大学との事前協議もなく、一方的に協定の破棄を通告することは不当だ。大学はあらゆる信条や民主的表現のため、安全な避難場所として維持されるべきで、この決定は警察や軍隊に信頼を与えるどころか、混乱と不信を生むことになる」と深い懸念を表明した。

▽双方の合意が条件

 ロレンサナ国防相は19日に発表した声明で「協定は過去のものとなった。署名当時と今では取り巻く環境は変わった。協定は大学側の要望に応えた善意の印だったが、その間に極端な思想が学内に広がり、政府を敵視する者の温床となった」とも述べている。ロケ大統領報道官は同日、「大統領は自らの分身でもあるロレンサナ国防相の決定を支持している」と語った。国家警察のウサナ報道官も、国防相の姿勢に同調した上で「学問の自由は無傷のままだ。治安部門は人々のより高尚な利益と人権を守るための仕事に徹するよう、憲法で義務付けられている」と発言した。

 一方、19日のネットニュース、ラップラーによると、アテネオ大で法律を教えるトニー・ラビーニャ教授は「国防省に1989年の協定を一方的に破棄する権限はない。双方の合意が破棄の条件になっている。国防相は信念を持って立ち上がっている学生をレッドタギング(赤タグ付)しただけだ」と指摘している。(岡田薫)

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