マルコス大統領は27日、第46回東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議・関連会議の後に開いた会見で、「トランプ関税」への対応について、中国の李強首相と意見が一致したことを明らかにした。大統領は米国による一方的な関税に対し懸念を表明し、ASEANとしての戦略方針の再検討の必要性を指摘した。
同日には初の中国・湾岸協力会議(GCC)・ASEAN間の会議が開催。また中国主導の国際開発銀行であるアジアインフラ投資銀行(AIIB)の金立群総裁とASEANのカオ・キム・ホン事務総長との会談も行われた。近く凍結を解除する見込みの米国の「相互関税」に対応するため、アラブ諸国を巻き込みながら中国とASEANの接近が進んだ格好だ。
マルコス大統領は、この地域の経済安定に対する中国の役割の重要性と、中国経済の変動がフィリピンを含むASEAN諸国に直接影響を及ぼすことを強調。「われわれは中国と多くの貿易・投資を行っている。一方的な関税措置が放置されれば、地域・世界経済の安定に広範なリスクをもたらす可能性がある」と警告した。
大統領はまた、中国・GCC・ASEANの枠組みを歓迎し、「非常に重要な経済圏だ。良好な合意を作れれば、世界のいかなる経済圏にも匹敵する存在になる」と述べた。
▽広大で奥深い市場
中国国営の中央電視台によると、李強首相は初の中国・GCC・ASEAN会議の演説で、「保護主義と一方的貿易主義が台頭し、デカップリング(切り離し)、貿易障壁、供給網の混乱が進むなか、われわれは市場開放を拡大し、障壁を撤廃することで、巨大な市場機会を創出することができる。3者の市場が連携すれば、世界最大級の域内市場を形成し、乗数効果を生み出せる」と強調。
また、李首相は「積極的な財政政策と緩和的な金融政策により、中国は内需主導型の成長を継続できると自信を持っている」とした上で、「『超大型経済』である中国経済は広大で奥深い規模を誇り、世界中の良質な製品に巨大な市場を提供できる。われわれは引き続き高水準の対外開放を拡大し、ASEANやGCC諸国を含む世界中の企業が中国の発展のチャンスを十分享受できるよう努める」と宣言した。第2次トランプ政権が保護主義的自国第一主義を打ち出すなか、相互利益の促進をうたう自由貿易の推進国としての役目を前面に打ち出した格好だ。
米国は4月2日に世界各国に相互関税を課すと発表。同9日に中国を除く世界各国への相互関税を90日間凍結すると宣言した。フィリピン政府はドリアンなど農産品の受け入れ拡大を中国に要望するなど、停滞傾向のある政府開発協力より一層の市場開放を求めている。(竹下友章)