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1月21日のまにら新聞から

18歳以上男女への徴兵制を推進 サラ副大統領候補が公約

[ 1371字|2022.1.21|政治 (politics) ]

ダバオ市のサラ・ドゥテルテ市長は、副大統領当選後の政策として、18歳以上男女への徴兵制を推進するとした

 ドゥテルテ大統領の長女であるダバオ市のサラ・ドゥテルテ市長は、各種世論調査で副大統領候補者トップを走る自身の当選後の政策として、18歳以上男女への徴兵制を推進するとした。国軍や国防省はサラ市長の唐突な政策表明に歓迎の意を示す中、左派系団体や一部副大統領候補者からは非難の声も上がっており、波紋を広げている。

 民放ABS―CBNの電子版は19日、サラ市長がペアで大統領候補のボンボン・マルコス氏と「首都圏バーチャルキャラバン」と題して実施したオンライン選挙キャンペーンの一環で、同政策に触れたことを報じた。「ユニチーム」との名称で選挙活動を行う同候補者2人は「徴兵制の実現を上下両院に働きかけていく」とした上で、サラ市長は「韓国やイスラエルのような他国で行われているのを見た。予備役軍事教練(ROTC)のように1教科、1週末、1年のうち1カ月といったものとは異なる」と強調した。

 ドゥテルテ政権下では、大統領をはじめロレンサナ国防相、元国家警察長官のデラロサ上院議員も徴兵制の導入を唱えている。同国防相は20日に歓迎の声明を出し、その中で徴兵制の利点として①軍は国を守り、人道支援や災害救助を行う安定した予備兵を確保できる②訓練と規律によって、より良い市民が生まれる③若者に国への奉仕の精神が植え付けられる――と述べた。

 一方で国防相は「訓練所を国中に設置する必要があり、毎年18歳になる数百万人を収容するための人員や資金の配分」を乗り越えなければならない障害として挙げた。「われわれは戦争状態にあるわけではないので、総動員する必要はほとんどないだろう」とした上で「ROTCの強制がより良い代替案であり、それでも紛争時や災害時に必要な身体を作るのに、十分だ」との認識も示した。

 ドゥテルテ政権下では軍事教練を全国のシニアハイスクール(日本の高校2〜3年に相当)の必修にする法が成立した。従来も大学生などへ軍事教練などを課す大統領令7077号があったが、同法はその修正版。過去にはROTCに絡んでサントトマス大学で学生が死亡する事件も起きており、2002年から選択制となっていた。

▽反論の応酬も

 副大統領候補のワルデン・ベリョ氏=勤労大衆党=は「サラ市長が潜在的な独裁者の『仮面を外した瞬間』だ」と指摘し「外部の脅威から自らを守る能力を気にしているという考えは、ドゥテルテ大統領が中国と米国の双方に屈服したこの6年間を考えれば、あり得ないことだ」と批判した。それに対してサラ市長は「恩知らずな国民」と一蹴、「ペリョ氏が過去何年にもわたって、『フィリピンの独裁』という今の時代に嘘だったと分かっているものに固執していなければ、私が真に支持するものをよく理解できるはずだ」と声明で反論した。

▽強制労働をもたらす

 また、人権団体カラパタンは徴兵制が「特に強圧的な政権の下では、非自発的な隷属や強制労働をもたらし、思想や信条、良心の自由といった基本的な市民生活の権利が侵害される」との声明を発表。「市民的な義務は、教育やさまざまな活動を通じた人権・権利の促進、貧困や不正の根源に向き合うこと、主権や領土の安全保障、国民の幸福と福祉に応える統治実現がもたらされることによって生かされてくる」とも主張した。(岡田薫)

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