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8月31日のまにら新聞から

民間投資が大きな役割 マハルリカ法施行細則発表

[ 1489字|2023.8.31|経済 (economy) ]

政府系ファンドの施行細則策定。役員の選任プロセスや資本金の財源が明らかに

 財務省理財局は29日、7月に設置法が成立した政府系ファンド「マハルリカインベストメントファンド(MIF)」の施行細則を策定したことを公表した。同規則は9月中旬に発効する。同日、比日経済協力インフラ合同委員会会合出席のため東京に出張していた経済閣僚らは、初の同ファンドの諮問委員会会合を開催。また、国際協力機構(JICA)本部で日本の大手商社をはじめとする民間企業、政府関係者など約130人を相手に同基金の説明会も開いた。

 ジョクノ財務相は声明で「海外投資家からは好感触を得ている。民間部門がMIFの成長に大きな役割を果たすだろう」と強調。

 その上で「われわれは道路網、クリーンエネルギー、水資源、農業ベンチャー、通信事業の開発を追求している。これらの領域は高い投資効果を期待できる」と説明。さらに「大きな潮流となりつつある『環境・社会・ガバナンス(ESG)』や、最新技術への投資にも活用可能」とした。

 施行細則は、MIFを運用するマハルリカインベストメント公社(MIC)の新設を規定。MICは通貨や商品、債権、国内外の社債、株式、スクーク(イスラム債)などの取引を通じ、幅広い事業・活動に投資できる。

 経営を担う理事会のメンバーは、財務相が職権上の理事長となるほか、MICの社長兼最高経営責任者(CEO)が副理事長に、政府系銀行ランドバンクの社長兼CEOと比開発銀行社長兼CEOに加え2人が常任理事に、民間から3人が独立理事に選ばれる。

 まだ空席となっているポストの中でも、注目されるのがMICの社長兼CEO人事だ。その資格者は「『信頼できる大学』で経済・経営分野の修士号以上の学位を持ち、有名な金融機関や官民組織で上級管理職として最低10年の経験を有する者」。任期は3年で、再選可能だ。

 その選任プロセスは、財務相、予算管理相、国家経済開発長官、財務相理財局長からなる諮問委員会が推薦し、それに基づき大統領が任命するというもの。

 マルコス大統領は「政治的影響を与えない」と豪語するが、理事人事を担う諮問委員会は閣僚で埋め尽くされている。マレーシア政府系ファンドの「ワン・マレーシア・デベロップメント」の元首相を巻き込んだ不正事件が記憶に新しい中、汚職への懸念がなおくすぶる。

 その一方で、MIF設置法は理事らに厳しい法的責任を課す。欠格事由があるにもかかわらず故意に役職に就いた場合、財務諸表が著しく不完全または不正確であるにもかかわらず故意に認可した場合、自ら進んで詐欺に利用されることを容認した場合、接待や汚職行為に対して制裁、報告、適切な措置を取らなかった場合など、さまざまな管理者責任を刑事罰とし、100万~1500万ペソの罰金および6~20年の拘禁刑という厳罰を明記する。

 ▽初期資本金の財源明確に

 MIFは5000億ペソの資金運用を目指すが、来年をめどとする創業当初の投資資金は1250億ペソ。政府系ランドバンクが500億ペソ、比開発銀行が250億ペソ、政府が500億ペソ拠出する。

 今回の施行細則で政府拠出分500億ペソを税外収入から捻出することが明らかとなった。中銀の配当金収入の100%(最初の2カ年)、比娯楽ゲーム公社(PAGCOR)およびその他の政府系娯楽事業者の収入の10%(最初の5年)、政府資産の払い下げ収入などが充てられる。

 それ以外の資金はMICが有価証券の発行で集める見込みだ。MICは自社債や株式など全ての種類の証券を発行できるが、それらの証券に政府保証は付かないという。(竹下友章)

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