在フィリピン日本国大使館は2日、首都圏マカティ市で邦人を標的とする拳銃強盗が先月30日に発生したと発表した。それによると、事件は同日午後9時半ごろ、同市サンイシドロ地区フィンランディア通りとボルタ通りの交差点近くで発生。歩行中の被害者の後ろから、オートバイに2人乗りの犯人が接近し、ショルダーバッグを強奪。その直後犯人は奪ったバッグを落とし、それを邦人が拾ったところ、背後から発砲。その際、男性は腕に擦過傷を負った。犯人は被害者に銃を突きつけ、バッグを再度奪ったという。
警察によると、被害者は茨城県在住の成人男性。バッグの中にはパスポートや携帯電話用充電器などが入っていたと男性は証言したという。
同日午後11時過ぎに、被害者の男性は同地区を管轄するマカティ署第3分署に駆け込み、事件を報告。警察は男性と一緒に同バランガイ(最小行政区)の事務所に行き、監視カメラ映像を確認したが、犯行現場近くの監視カメラは故障中で、犯行の様子は記録されていなかった。
現場近くの日系自動車ディーラーの警備員は「この通りは夜9時頃にはどの店も閉まっており、人通りもない。目撃者を見つけるのは難しいのでは」と話している。
バランガイ事務所前に設置された監視カメラには、同日午後11時50分ごろに、警察官の同伴で事務所を訪れる黒いTシャツ、白のズボン姿の被害者男性の姿が収められていた。同バランガイの職員は、「この種の強盗は無差別に起こっており、フィリピン人が被害にあったものを含めると4月だけで約10件発生している」と語った。
▽被害者非協力の壁
男性は事件があったことを証明する警察の報告書を請求したものの、刑事事件としての立件のために必要な被害届を提出する意思はないと表明。ある警察官は「連絡もつかなくなったと聞いている」と漏らす。
首都圏警察マカティ署のアルティスタ広報官によると、第3分署は捜査を継続しているが、同邦人を被害者とする事件としては立件不可能の見込み。同広報官は「フィリピンで強盗は親告罪。被害者に刑事事件化の意思があって警察に協力してくれなければ、逮捕状の発付の申請もできない。多くの事件で日本人は被害届を出さずに帰国するため、捜査が困難となってきた」と指摘。現在、特別委任状(SPA)を通じて被害者の代理人を立てて被害届を提出する仕組みを作れないか、日本大使館にも相談している」と取り組みを説明した。
昨年10月19日から続発している邦人が被害者となったと報告されている拳銃強盗の報告は、今回で15件目。うち、11件がマカティ市で報告されている。発砲を伴ったと報告されたものは、昨年12月29日にマニラ市エルミタ地区で発生した事件に続き2件目。(竹下友章)