フィリピンにおける交通事故死者数の急増を背景に、日本のNPO「アクション」はこのほど、交通安全の包括的な啓発・教育運動「タマン・ライドPH(Tamang Ride PH)」を立ち上げた。その発足を記念するグランドローンチイベントが、21日、タギッグ市ボニファシオグローバルシティにある三越モール裏の特設会場で開かれた。
アクションは、1994年に横田宗代表によって設立され、比における孤児支援や児童福祉人材の育成などで知られる日系NPO。比における交通事故による死者数が年間1万3000人を超え、「交通戦争」とも言われる状況を受けて、子どもと地域社会の命を守る総合的な交通安全事業に乗り出した。
今回の運動では、①SNSを通じた啓発情報の拡散②事故情報の登録・分析・共有が可能なアプリを開発③子ども向け交通安全教育の全国での推進――という3本柱を掲げ、ホンダ財団やトヨタ、ヤマハ、カワサキなど日系企業と連携。各企業が制作した動画や教材が活用され、モバイルアプリでは事故多発地点の共有や安全運転のインセンティブ提供も構想されている。
イベント当日は、日本国大使館、ホンダ、ヤマハ、フィリピン赤十字社などの関係者が登壇。午前の部では、横田代表が運動の趣旨を説明し、交通事故の被害を受けた遺族の声などをもとに作成された教育コンテンツとアプリのプロトタイプを紹介した。
道路を封鎖して設けられた特設会場には、協賛企業による展示ブースが開設されバイクや車両の展示、子どもが乗車できるミニチュアカーによるアトラクション、児童によるダンスパフォーマンス、インフルエンサーや参加者との交流などが行われた。
アクションはこれまで、セラピストや美容師育成などの職業訓練を実施する「チカラ・プロジェクト」や、JICAとの児童福祉施設職員研修事業などを展開してきた。2019年には社会福祉開発省に提言した職員研修規定が制度化され、寄付控除対象団体としてもフィリピン政府に認定された。横田代表は、「小学生の頃、1970年代の日本の交通事故死者数は年間約1万6000人。しかし、昨年は年間約2700人に減少している。交通安全を啓蒙することで比でも同様に交通事故死者を減らせるはず。比人独力で活動するのではなく、私達アクションやホンダ、ヤマハ、カワサキなどの日本企業も力を合わせて取り組む」とした上で、「これから比全土で初期啓蒙活動を展開する。今日がその第1日目だ」と語り掛けた。(青柳一臣)