3月に正式発足したバー・レストラン同業者団体「MACRO」マカティ支部(クリス・ウーン支部代表)は5月30日深夜、首都圏マカティ市リトル東京周辺で、警察職員と協力のもと待機中のバイクタクシーが本物かどうかを確認し、確認したオートバイに同団体のステッカーを貼る活動を開始した。昨年10月から首都圏で続発する邦人を標的とする拳銃強盗で、犯人の多くがアンカス、ジョイライド、ムーブイットなどバイクタクシーを偽装する手口を用いていることを受けた対抗策だ。待機中の運転手が「見張り役」をしている可能性も想定し、周辺で操業するドライバーが本物かどうか見分け、不審なドライバーを発見しやすくするとともに、それによって強盗犯を遠ざけ防犯につなげるのが狙い。
今回は、通常多くのバイクタクシーの待機場所となっているリトル東京とマカティ・セントラル・スクエア(MCS)の間のフェルナンド通りで実施。運転手がドライバーとして登録されているかを確認し、確認後に「MACRO」のステッカーをオートバイの前面に貼付した。確認したオートバイに対しては、運転手の同意を得て名前とプレートナンバーを記録し、リストを作成。今回は雨上がりのためいつもより数が少なかったが、ジョイライドやグラブフードなどのオートバイを含め数台を確認した。
▽類似犯の逮捕進む
現場で活動に協力したマカティ署のイアウラ2級巡査部長は、「こうした連携はわれわれの取り組みとも一致しており、とても助かる」とした上で、「つい最近拳銃強盗を一斉逮捕したが、マニラやパサイを拠点とするギャンググループが行っていることが分かった」と述べ、マカティ市が市外の犯罪グループの「狩り場」になっている状況があったことを指摘。「われわれは現在、特殊部隊や私服捜査員や投入も含め、外国人や観光客を含めた人々の安全を確保するため全力を尽くしており、実際にその成果も出ている」と強調した。
マカティ署は30日、同市ベルエアで29日午後11時55分ごろに発生したオートバイ4人組による拳銃強盗の犯人を逮捕したと発表。4人からは38口径のリボルバー拳銃や手榴弾などを押収した。警察は反社集団「バタンシティージェールギャング」のメンバーだとしている。また28日にはその前日に同市ベルエアで発生した2人乗りオートバイによる強盗事件の容疑者を逮捕。容疑者からは手榴弾を押収した。30日には首都圏警察のアベリン警視総監、首都圏警察南部本部のアルゲレス本部長、マカティ署のデラトレ署長が同署で会見を開き、警察の取り組みの強化が功を奏していることを強調した。
マルコス大統領は19日に中間選挙で自陣営が劣勢となったことを「国民に失望されている」と総括し、警察のパトロールの強化と対応の迅速化の指示を出したと発表した。それを受け首都圏警察は26日に2万1000人以上の人員を投入して警戒を強化したことを発表していた。
▽見張りテントも設置
オートバイの確認活動に先立ちMACROマカティ支部は28日、バー・レストランが密集するクリークサイド(リトル東京エリア)に、加盟バー「HEIWA」の協力で警備用テントを設置。午後8時から午前2時までボランティアが警戒に当たるほか、周辺をパトロールする警察官の臨時の屋外詰め所(アウトポスト)としても提供する。現在は正式な警察の詰め所ではないが、マカティ署への認可を申請中だ。また、同団体はさらなる警戒テントの設置も検討している。
昨年10月19日から首都圏では計17件の邦人を標的とする拳銃強盗が日本大使館から報告されているが、リトル東京・MCS・クリークサイドエリアで報告されたのは2件。飲食店オーナーらからの要請を受けて昨年12月から警察による警備が強化されている。(竹下友章)