公益財団法人社会貢献支援財団(本部・東京都港区、安倍昭恵会長)は28日までに、第63回社会貢献者表彰の対象者を選出した。同財団では、人びとや社会のために尽くした個人・団体を対象に、年2回表彰を行っている。各回3組について活動紹介ビデオが制作され、表彰式典で上映される。今回の表彰対象に選ばれた特定非営利活動法人アイキャン(本部事務局・名古屋市東区、鈴木真帆代表理事)の紹介ビデオ制作のため、26日に首都圏ケソン市パヤタスとリサール州サンマテオの現地施設で行われたの収録にまにら新聞記者も同行した。
▽職業訓練で生計向上を目指す母親たち
ケソン市パヤタス地区のICAN Centerでは、現在アイキャンの友好団体として自立した生産者団体SPNP(Sikap Pangkabuhayan ng mga Nanay sa Payatas=「生計向上を目指すパヤタスの母親たち」)とメンバーのインタビューが撮影された。作業場には、日本全国から寄贈された7台の足踏みミシンが並んだ。ミシンは、大分工業専門学校(大分県大分市、坪井泰士校長)が募集・修理し、グループホールディングス会社(KPGroup Philippines Inc.)を首都圏モンテンルパ市に持つカネパッケージ株式会社(本社・埼玉県入間市、金坂良一代表取締役)が連携して梱包・輸送を担った。
かつてごみ拾いで生計を立てていた女性たちは、アイキャンの支援により縫製を習得し、テディベア、カフェエプロン、コースター、ティッシュカバーなどの製作やイベントでの販売を通じて、収入向上に努めている。撮影では、SPNPメンバーがアイキャンとの出会い、製作物について語る姿が収められた。
▽ごみ山崩落事故の記憶
パヤタスのごみ処分場では、2000年7月10日に大規模なごみ山崩落事故が発生し、周辺の500世帯以上が巻き込まれた。この事故では、多くの住民が生き埋めとなり、正確な犠牲者数は今もつかめていない。事故現場に建てられた慰霊施設でも、撮影が行われた。
SPNPメンバーは、「連日の雨でバラックに人々がこもっていたところ崩落が起き、多くの犠牲が出てしまった」と振り返った。救助作業には重機が投入されたが、化学物質による深刻な汚染のため、完全な捜索は行われなかったという。17年12月にパヤタスのごみ処分場は完全に閉鎖されたが、現在、かつてのごみ山表層には草木がまばらに茂っており、サイクリングロードが設けられている。
▽児童養護施設「子どもの家」
リサール州サンマテオでは、アイキャンが運営する児童養護施設「子どもの家」を訪問し撮影が行われた。この施設では、身寄りのない5~18歳の子どもや青年たち、育児放棄された子どもたちを受け入れている。現在、12~16歳の男児13人が暮らしており、寮長を中心に日常生活の指導、食事づくり、生活環境整備を担うパートタイムスタッフ、さらにフィリピン大学の学生ボランティアが学習のサポートをしている。
広い敷地内にはマンゴーやジャックフルーツの木が茂り、犬や牛、ヤギ、鶏も放し飼いにされている。訪問時には、子どもたちが楽しそうにバスケットボールをしていた。
鈴木代表理事は、「施設に来たばかりの子どもたちは、割り与えられたベッドや清潔な寝具を前に『本当にここで寝てよいのか』とたずね、初めての誕生日ケーキやみんなからのお祝いの言葉に、うれしくて泣いてしまう子も少なくない」と語った。
▽表彰式典でビデオ披露へ
第63回社会貢献者表彰式典は、7月14日に東京都千代田区の帝国ホテルで行われる予定。式典では、今回撮影されたアイキャンの活動紹介ビデオが上映される。
アイキャンでは、寄付の呼びかけのほか、スタディツアーやインターンシップの募集も行っている。詳しくは公式ホームページで案内している。
(青柳一臣)
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公益財団法人社会貢献支援財団(https://www.fesco.or.jp/)。特定非営利活動法人アイキャン(https://ican.or.jp/)