大阪府大阪市の夢洲で2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)が4月13日に開幕した。同日にオープンしたフィリピンパビリオンは、籐(トウ、東南アジアに広く分布するヤシ科の植物)細工を模した外観で、比全国212の伝統織物のタペストリーが散りばめられ、ひと目で「多様な伝統文化の誇り」を感じさせる。夜はライトアップされ、編み目の影が幻想的な雰囲気を演出していた。
併設されたベンチは寝転ぶのに最適なカーブの形状で、実際に寝そべってくつろぐ人も見られた。比の街中で昼寝をする比人らを思い起こさせる、のんびりした「フィリピン感」のある空間となっていた。
建物は、複数の比人建築家による提案から、審査を経てカルロ・カルマ氏のデザインが採用された。資材の一部には環境負荷の少ない木材が使われているという。
▽伝統と技術の融合
パビリオンのテーマは「Woven(織物・織りなす)」。スタッフもカラフルな伝統織物を首に巻き、来場者を笑顔で歓迎した。
パビリオンには、18地域の職人が約半年かけて制作した大きな伝統織物が展示され、地域紹介の動画や説明も添えられていた。織物には山や動物、海、クリスマスの飾り「パロル」など、地域を象徴する模様が織り込まれ、立体的な表現やプロジェクションマッピングによる演出で、7000以上の島が集まる比の多様な文化と伝統が鮮やかに表現されている。
来場者の動きに反応して映像が変化するインタラクティブな「ダンスチャレンジ」スクリーンや、AI(人工知能)フィルターで顔を加工できる体験コーナーもあり、多くの人が楽しんでいた。
2時間おきに比文化センター(CCP)所属ダンサーらが様々な伝統舞踊を披露するほか、人数限定で比人セラピストによる比の伝統マッサージ「ヒロット」を受けられるブースも設けられている。
万博の開催期間、パビリオン・アテンダントとして会場に出張している在比邦人の岡本浩志さんは「子供だけでなく、車いすに乗った来場者も参加型で楽しまれている様子」と話した。岡本さんによると、申請や物資調達が完了でき次第、5月中に土産物と食べ物の販売を始める予定。トゥロン(焼きバナナ)やウベ(紫芋)味のアイスクリーム、ハロハロといった比定番スイーツのほか、肉を醤油や酢で煮込んだ代表的な家庭料理アドボなどの軽食もメニューに並ぶという。
▽「誰もが楽しめる」
パビリオン比人スタッフの比観光推進局(TPB)のカレム・ミランダさんは来場者の反応について「今のところ大変良い反応をもらっている。誰もが歓迎されるような温かい雰囲気で、自由に楽しめて気に入ったという声も多く聞かれ、スタッフ一同、とてもうれしい」と話した。
展示を通して伝えたいことは「それぞれ特徴が違う伝統織物が表すように、各地域、コミュニティが集まって、たくさんの島から成る比という国ができているということ。この違いがいかに素晴らしいかということ」。また、伝統織物とプロジェクションマッピングの演出にみられる「伝統と現代技術の融合」も一つのテーマで、「便利な技術にあふれる時代を生きながらも、伝統や遺産を重んじて守るという比人の姿勢を示したい」と説明した。
パビリオンの好きな点をミランダさんはこう語る。「どの年齢層も楽しめる何かを見つけられるところ。これってすごくフィリピンだなと。どこにいても誰でも、あなたが楽しめるものが必ずある。万博でもそんな場所を提供していきたい」。