ディゾン公共事業道路相は9日、国内の8000件の公共事業を調査した結果として、そのうち421件が実態を伴わない「幽霊事業」だったことを公表した。今回発見された「幽霊事業」は、ほとんどルソン地方に集中。調査は公共事業道路省、経済計画開発省のほか、国軍、国家警察と合同で実施された。初期調査報告書はマルコス大統領が先月設置した、治水汚職などを調査するインフラ独立委員会(ICI)に提出された。
同相は「幽霊事業に関する成果はすぐ出る」と強調。「同事業に関係した人物の責任を明らかにし、訴追するまでには長い時間はかからない」とし、ICIと共に迅速に訴追手続きを進める意向を示した。
さらに「まだ数万件の事業の検証が必要だ。今回は始まりに過ぎない」と述べ、大統領から命じられた「徹底的な大掃除」を断行する姿勢を示した。
ディゾン氏との会合を終えたICIのブライアン・ホサカ事務局長は「この報告書によって示された方針は重要だ。421事業が特定されたことで、(責任追及の)手続きはより加速している」と述べ、今後ICIの特別顧問兼調査責任者のアズリン氏(元国家警察長官)が全国の治水事業現場を視察する予定であることを明らかにした。
幽霊事業に関与した請負業者、役人、政治家に対しては、汚職関与者への刑事罰を規定する賄賂・汚職防止法(共和国法3019号)違反での立件を目指すとみられる。
治水汚職を巡っては、7月の施政方針演説(SONA)で大統領が徹底的な追及を宣言して以降、上下両院議長が交代し、「クーデター」騒ぎも伴う大規模デモが発生するなど、フィリピンの政治・社会を大きく揺るがす事態となっている。
上院では、9月にソット新議長体制となった後でも、疑惑追及の急先鋒の一人でソット氏の盟友であるラクソン上院副議長が、強い調査権限を持つ上院ブルーリボン委員会の座を着任後1カ月経たずに辞職するなど、政治的に不安定な状況が続いている。(竹下友章)