英国オックスフォード大のロイター・ジャーナリズム研究所は17日、今年の「デジタルニュース報告書」を公表した。フィリピンではドゥテルテ陣営と政府の対立が先鋭化し、SNS上で「情報戦」が展開される中、誤情報・偽情報を懸念していると回答した割合は、比が調査対象国に入った2020年以降最高の67%(前年比4ポイント増)を記録した。世界平均(58%)を9ポイント、アジア太平洋地域平均(60%)を7ポイント上回った。同報告書のフィリピンの章を担当した、フィリピン大マスコミュニケーション学部のイボンヌ・チュア准教授が英字紙スターで分析を発表した。
誤情報・偽情報への不安の高まりについて、同准教授は「2020年の57%から10ポイント上昇しており、これは偽りの、または誤解を招くオンラインコンテンツの拡大を反映している」と指摘した。
▽政治家が偽情報の脅威
「誤情報・偽情報の拡散に最も大きな役割を果たしている主体(人物)は誰か」という質問への回答としてフィリピンで最も選択されたのは政治家で55%。それに、インフルエンサー(48%)、活動家(38%)、ジャーナリスト(37%)、外国政府(34%)、著名人(33%)、一般人(29%)が続いた。
世界平均では、政治家とインフルエンサーがそれぞれ47%で同率トップ。また世界平均でジャーナリストを誤情報・偽情報の発生源と回答した割合は32%。比は平均より5ポイント高かった。
また、「最も多く偽情報に接する情報チャンネルは何か」という質問には、フェイスブックが68%でトップ。世界平均(49%)を19ポイント上回った。次いで、TikTok(48%)、ユーチューブ(39%)、X(旧ツイッター、27%)、ニュースサイト(24%)が続いた。
▽66%「SNSがニュース源」
ニュースの情報源について、もっとも多く選ばれたのは「オンライン」で83%(前年比1ポイント増)。次いで、SNSが66%(同3ポイント増)、テレビが46%(変化なし)、ラジオが17%(3ポイント増)。新聞など印刷媒体は昨年と変わらず13%にとどまった。一方で、新たな項目であるニュース・ポッドキャストは12%、チャットGPTなどAIチャットボットが9%の回答者に選択された。
SNSのプラットフォーム別で最もニュースの情報源として選択されたのは、フェイスブックで65%(前年比4ポイント増)。次いで、ユーチューブ(50%、5ポイント増)、TIkTok(29%、6ポイント増)、フェイスブックメッセンジャー(27%、1ポイント増)、インスタグラム(14%、2ポイント増)、X(11%、2ポイント増)と続いた。
▽政府を信用
情報を確認するための情報ソースとして最も選ばれたのは、「政府のウェブサイト・チャンネル」(40%)で、「信頼のおけるニュースブランド」(37%)より高かった。ファクトチェックサイトを利用している割合は34%に上り、世界平均(25%)より9ポイント高かった。
一方で、「情報確認のために、SNSを見る」と回答した割合は27%となった。
また、「ニュースに触れるのを避けることがある」と回答した割合は48%。世界平均(40%)を超え、48カ国・地域で7番目に高かった。最も低いのは日本で11%だった。
調査は1月から2月にかけ世界48カ国・地域から9万7055人を対象に実施。フィリピンからは2014人が回答した。(竹下友章)