11日に上院で訴状の読み上げが予定されているサラ副大統領に対する弾劾裁判に対し、早期かつ確実に実施するよう求める圧力が高まっている。上院規則委員会のトレンティーノ委員長(与党院内総務)は9日、上院総会で、11日から30日までの19日間で判決を出すことは可能との見解を提示。今国会は今月30日で終わり、来月から中間選挙の結果を反映した新たな議会構成となるため、休会に入っても裁判を続行し、今国会中に判決まで行き着く強行スケジュール案を提出した。議会は夜遅くまで紛糾し、エスクデロ上院議長は午後9時ごろ、ビリャヌエバ議員の動議に基づき弾劾裁判の裁判長就任の宣誓を行った。
トレンティーノ氏のスケジュール案によると、被告となるサラ氏には法律上、上院で読み上げられた弾劾状への返答を提出するまで10日間の猶予が与えられるが、検察役は22日にそれへの返答を提出し、23日に双方の冒頭陳述、24日~25日に検察からの証拠提出、25日~26日に弁護側の陳述、27日反証提出、28日に口頭弁論、29日に上院で非公開協議を行い、30日に判決を出すという強行案。トレンティーノ氏は上院での弾劾手続きが11日に延期と発表された後、「6月30日までに判断を出せなければ、この弾劾は事実上棄却される」と述べていた。
一方、ココ・ピメンテル上院野党院内総務は9日、その日の内に弾劾裁判を招集し、10日に弾劾条項の読み上げを求める動議を提出した。また、リサ・ホンティベロス議員は、11日に弾劾裁判開廷の手続きを始め、14日に休会に入ることについて「数カ月も足踏みして、たった3日の弾劾裁判など狂気の沙汰だ」と批判した。
一方、ドゥテルテ派のパディリャ議員(PDPラバン党首)は、サラ氏への弾劾手続きの打ち切りを宣言する決議案を提出した。
▽「耳を貸すつもりない」
9日には速やかな弾劾裁判の開廷を求める市民団体らが、上院議場の周辺で3日間にわたる抗議活動を開始。サラ氏への最初の弾劾訴状の提出を承認した社会民主政党アクバヤン(政党リスト)の発表では、初日に約3000人が平日にもかかわらず抗議に集まった。
エスクデロ上院議長は同日の会見で、そうした声に対し「耳を貸さない」と明言。「自分が正しいと信じることに基づき、憲法と法律に従った行動を取るつもりだ」と述べた。
休会中に弾劾審理手続きを進めるべきという意見については、過去弾劾裁判にかけられたエストラダ元大統領、コロナ元最高裁長官、グチェレス元行政監察院長の前例を挙げ、「これらの前例では、上院は計画された休会の後に弾劾裁判の手続きを始めた。過去の事例で手続きに苦情があったとは聞いたことはない」とし、さらに「休会中に裁判を開くことは法律に反し、もしそうしたら、被告となるサラ氏に最高裁に訴え出る理由を与えてしまい、憲法上の危機となる可能性がある」と述べた。
下院による弾劾起訴状は2月に下院から上院に送達されたが、散会宣言前に間に合わず数カ月棚上げとなった。上院での弾劾訴状の読み上げは当初6月2日に予定されていたが、11日に延期された。 (竹下友章)