
2011年4月20日にミニアルバム「Letters to U」でデビューしたLiSAは、2014年1月に初めて武道館ワンマンを行って以降、節目のタイミングでたびたびこのステージに立ってきた。本稿では実に12回目の武道館公演となった5月14日の模様を紹介する。
サプライズはオープニングから

年初にパンキッシュなビジュアルを公開し、2025年は「PATCHWORK」をテーマに掲げて活動していくことを宣言していたLiSA。その取っ掛かりとも言える最新シングル「ReawakeR(feat. Felix of Stray Kids)」の表題曲でStray Kidsのフィリックスと共演し、同シングルのカップリング曲「うぃっちくらふと」でキタニタツヤとタッグを組むなど、従来とは異なる趣きの楽曲でLiSAッ子(LiSAファンの呼称)を驚かせた。切り裂くという意味を持つ「RiP」を冠した武道館公演では、「これまでのLiSAを切り裂き、新たなLiSAを見せる」ことに挑戦。セットリスト、演出、楽曲のアレンジに至るまで、デビュー14周年イヤーに突入した彼女だからこそ見せられる練り上げられたステージを展開した。

LiSAッ子を驚かせる企みは、オープニングから始まっていた。開演時刻を迎え目の前に現れたのは、漆黒の衣装に身を包んだ弦カルテット“RiPPER STRiNGS”。厳かにチューニングが始まり、ざわついていた客席は水を打ったような静けさに包まれる。カルテットが紡ぐ調べが響く中、「明け星」を歌う声がLiSAッ子の耳に飛び込んできた。シンフォニックな楽曲は数多くあれど、LiSAが単独公演で生の弦楽器を取り入れるのは異例。美しく勇壮な歌声と弦楽器の芳醇な音色が紡ぐ壮大なサウンド、そして生物のようにさまざまな造形を作り出す可動式LEDパネルのスペクタクルな演出が、会場をたちまちLiSAワールドに染め上げていく。「ただ一筋の光をくれた」。そうLiSAが歌い上げると、ステージに一筋の光がまっすぐ差す。そんなドラマチックな演出とともに「RiP SERViCE」の幕が上がった。
ときに淑女のように、ときに悪女のように……
引き裂かれた布を大胆に使用した白いミニドレスをまとったLiSAは、◯□▽を模したセットが放つ光の中、「ぶどうかーん!」と喜びをにじませた声でシャウト。ライブアンセムとしてすっかり根付いた2022年リリースの「一斉ノ喝采」を皮切りに、「WiLD CANDY」「ViVA LA MiDALA」といったBPMの高い、血湧き肉躍るような楽曲を立て続けに披露していく。着実に場内のボルテージが上がる中、LiSAは「永遠」を歌いながら客席の近くまで歩みを進め、目の前でLiSAッ子に手を伸ばす。しかし、あと少しで触れられそうで触れられない、そんなもどかしい距離が楽曲の切ない世界観を表現していた。

LiSAのライブといえば、趣向を凝らしたオリジナリティあふれる衣装も特徴。弦カルテットが再び合流してのブロックが始まる際にはメイドたちの手を借り、ゴシックテイストの漆黒のロングドレスに生着替え。「うぃっちくらふと」では、メイド服をまとったトルソーにしだれかかり、毒をはらんだ甘やかな声を発する。ときに淑女のように、ときに悪女のように振る舞うLiSAの一挙一動にLiSAッ子の視線は釘付け。一方で、LiSAの声、弦楽器とピアノを中心としたアレンジによる「炎」が始まると、会場の空気は張り詰めたものに。日輪を想起させる照明演出の中、切実さを帯びたLiSAの声が武道館いっぱいに響く。その情感ほとばしるパフォーマンスに誰もが圧倒されたようで、アウトロが終わった後も拍手がしばらく鳴り止むことがなかった。
みんなと一緒に切り裂いて、最高の日に

自身の代表曲である大切な1曲を歌い終えたLiSAは「私にとって12回目、14周年をお祝いする日本武道館です」と切り出し、「いつもみんなを驚かせたくて。どんな気持ちで、どんな予定のあとでこの日を一緒に楽しみにしてくれるみんながいるんだろうと思ったら、いつもいつもみんなの期待を超えたくて、デート(ライブ)を“ねりねり”してきました」とライブに懸ける情熱を吐露。そして、「大きな節目を前にすると、ちょっとびくびくしちゃって。少しだけ不安になりました。でも、そんな鬱憤とかライブ前の不安な気持ちとか、いつもみんなが切り裂いて、いつも最高の日として、新しく作り変えてくれた……だから今日はやりたいことをいっぱいやって、みんなと一緒に(不安や鬱憤を)切り裂いちゃおう」とLiSAッ子への感謝の思いを交え、「RiP SERViCE」と名付けたライブのコンセプトについて言及した。LiSAはLiSAッ子への愛を続く「サプライズ」でも表明。歌詞をモニターに投影させながら、「どんなに眩しい 願いも越えていく キミの サプライズが」「キミとまだ みたいミライ」とトレードマークである八重歯をのぞかせつつ歌い上げた。


穏やかで温かなひととき挟み、「ReawakeR(feat. Felix of Stray Kids)」を皮切りに再び“飛ばしていくモード”にシフトしたLiSAは、バンドメンバーである“わんたんにゅーメンズ”とともに、怒涛の勢いでハイボルテージなダンスチューンや“ロックヒロイン”の異名にふさわしいエモーショナルな楽曲を息つく間もなく披露。汗ばんだ首元に長い髪を張り付かせ、太腿をあらわにしながらステージを躍動し、「QUEEN」のラストで「私に限界はない」と決意表明のように叫んだ。LiSAッ子の盛大なシンガロングが欠かせない「ADAMAS」では、LiSAもあらんかぎりの声で絶唱。ステージを踏み締め、マレットを振り下ろす彼女の頭上には、LEDパネルが真紅のダイヤを形作り、壮観な景色を描き出した。
運命共同体=LiSAッ子とともに15周年へ


「全力で生きた先に武道館が待っていたんだ」と歌詞の一部を変えて「ハウル」を歌い終えたところでLiSAは、一緒にステージに立つわんたんにゅーメンズ、RiPPER STRiNGSのメンバー1人ひとりを丁寧に紹介。「心ゆくまで14周年をやり切りましたので、『PATCH WALK』につないでいきます!」と9月にスタートするホールツアー「LiVE is Smile Always ~PATCH WALK~」に向けて早くも思いを馳せる。そして「Little Braver」をもってライブをフィナーレへと導いた。LiSAッ子との別れ際、「運命共同体ということで、15周年に向かっていきましょう」と告げ、「1回裁断して新しい入り口を、新しい道を作っていくために切り刻みたい。形を変えて、三角になったり、四角になったり、丸になったり、カケラになったり。いろんな形になりながら道をまたつないでいきたい。そんな気持ちを込めて『RiP SERViCE』を作りました」と、照明や可動式LEDパネルの動きなどの舞台セットについて種明かし。“ねりねり”したデートの成功に充実感をにじませ、「15周年も突っ走っていくのでついてきて!」ととびきりの笑顔を浮かべながら投げキッスをLiSAッ子に贈った。
LiSAは6月に初の北米ツアー「ANOTHER GREAT DAY North America Headline Shows 2025」を行ったのち、9月より全国のホール会場を巡る「LiVE is Smile Always ~PATCH WALK~」を開催。ホールツアーのチケットは現在LiSAのオフィシャルサイトにて先行予約を受け付けている。
セットリスト
「LiSA LiVE is Smile Always~RiP SERViCE~」2025年5月14日 日本武道館
- 明け星
- 一斉ノ喝采
- WiLD CANDY
- ViVA LA MiDALA
- FRAGILE VAMPIRE
- 罪人
- 永遠
- ASH
- うぃっちくらふと
- 炎
- サプライズ
- ReawakeR(feat. Felix of Stray Kids)
- RED ZONE
- L.Miranic
- QUEEN
- REALiZE
- ADAMAS
- crossing field
- ハウル
- Little Braver
公演情報
ANOTHER GREAT DAY North America Headline Shows 2025
2025年6月18日(水)アメリカ ニューヨーク Terminal 5
2025年6月19日(木)アメリカ ニューヨーク Terminal 5
2025年6月23日(月)アメリカ ロサンゼルス The Roxy Theatre
2025年6月24日(火)アメリカ ロサンゼルス YouTube Theater
2025年6月28日(土)メキシコ メキシコシティ Pepsi Center
LiVE is Smile Always ~PATCH WALK~
2025年9月27日(土)埼玉県 サンシティホール 大ホール
2025年10月4日(土)奈良県 なら100年会館
2025年10月6日(月)大阪府 オリックス劇場
2025年10月13日(月・祝)茨城県 水戸市民会館
2025年11月1日(土)北海道 札幌文化芸術劇場hitaru
2025年11月3日(月・祝)北海道 旭川市民文化会館
2025年11月15日(土)福岡県 福岡サンパレス ホテル&ホール
2025年11月16日(日)熊本県 市民会館シアーズホーム夢ホール(熊本市民会館)
2025年11月22日(土)宮城県 仙台サンプラザホール
2025年11月24日(月・振休)秋田県 あきた芸術劇場ミルハス 大ホール
2025年12月12日(金)山口県 周南市文化会館
2025年12月14日(日)高知県 高知県立県民文化ホール オレンジホール
2025年12月19日(金)石川県 本多の森 北電ホール
2025年12月21日(日)長野県 ホクト文化ホール
2026年1月4日(日)東京都 東京国際フォーラム ホールA
2026年1月5日(月)東京都 東京国際フォーラム ホールA
2026年1月9日(金)愛知県 Niterra日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
2026年1月12日(月・祝)三重県 シンフォニアテクノロジー響ホール伊勢
提供元:音楽ナタリー