ディゾン運輸相は30日、首都圏パシッグ市に建設予定の首都圏地下鉄オルティガス駅を視察した。その際、記者団に対し地下鉄の2028年までの部分開通について「非常に困難な課題」との見解を示した上で 「大統領から与えられた課題を受け入れた」と述べ、可能な部分開通区間はバレンズエラ駅、キリノ駅(ケソン市ノバリチェス)の2駅、またはそれにノースアベニュー駅(ケソン市ディリマン)などを入れた4駅にとどまるとの見通しを示した。バレンズエラ駅~キリノ駅の区間は約2キロ、キリノ駅~ノースアベニュー駅の区間は約4・5キロ。全17駅全長33キロの首都圏地下鉄の中の、北端の一部となる。
ディゾン運輸相は3月に「28年までの部分開通は困難」との見方を示していたが、今月16日にマルコス大統領が同相らとキャンプアギナルド駅(ケソン市国軍基地)を視察した際に「28年までの開通が可能だ」と発言していた。それを受けディゾン氏は今回、マルコス政権内で「世紀の事業」と位置づける首都圏地下鉄の一部開通の実現に強い関与を示した格好だ。
ディゾン氏は首都圏地下鉄工事の進捗率について「28%だ」と説明。さらに、タギッグ市のフードターミナル公社(FTI)駅、マニラ空港駅などについては、「建設契約もまだ結ばれていない」と報告した。
▽起工式から3年経て着工へ
パシッグ市のビコ・ソット市長や政府・請負企業関係者と共に現場視察をしたディソン氏は、今回視察したオルティガス駅について「立地上、最も重要な駅となり、規模も最大だ」と強調。視察の理由については、「最後に残った土地問題を確認するために視察した。5件の土地収容問題があったが、4件は解決した。今日は、大統領府行政規律委員会(PCGG)、リチェル・シンソン下院議員(政党リスト)含め関係者全員がおり、全員が問題の解決に協力している」とし、「早ければ来週にも最後の土地問題を解決できる。起工式から約3年が経ったが、とうとう着工できる」との見通しを示した。同駅の完成予定は「30年か31年」とした。
先に視察したキャンプアギナルド駅区間については、「掘削機2機がケソン市ホワイトプレインズ地区を1日5~6メートルのペースで掘削しており、2026年末までにオルティガス駅に到達する見込みだ」とした。
首都圏地下鉄の部分開通は当初22年が目標だったが、コロナ禍で25年に延期され、一昨年はさらに部分開通をやめて29年に全面開通を目指すと発表するなど、二転三転している。同事業は、国際協力機構(JICA)の本邦技術活用案件(STEP)の適用を受けており、建設は複数の日本企業が中心となって請け負っている。(ロビーナ・アシド、竹下友章)