治水汚職問題の調査のため先月設置されたインフラ独立委員会(ICI)は29日、「幽霊事業」など治水汚職に関与した疑いがあるとして、エストラダ元大統領の息子で現上院議員のジンゴイ・エストラダ氏、上院金融委員長で元・技術教育技能開発庁(TESDA)長官のジョエル・ビリャヌエバ氏を含む、現・元議員・政府高官6人への刑事訴追を勧告する報告書を行政監察院(オンブズマン)に提出した。改正刑法、収賄汚職防止法、略奪行為防止法の定める収賄、公務員汚職、私的蓄財の罪に抵触した疑い。
ほかに訴追勧告されたのは、治水汚職問題でロムアルデス前下院議長と共に議会の中心人物として名を挙げられ、先月末に辞職したザルディー・コー前下院議員、現会計監査院の委員を務めるマリオ・リパナ氏、首都圏カロオカン市を地盤とする前下院議員のミッチ・ウイ氏、元公共事業道路次官ロベルト・ベルナルド氏。
ICIのアンドレス・レイエス委員長=元最高裁判所判事=は、「証言によると、このスキームはある国会議員から始まり、この議員が(元公共事業道路省ブラカン州担当技官の)アルカンタラ氏に予算の充当があると連絡して成立していた。洪水対策事業のキックバックは25%~30%あり、10%程度の他の事業より高かった」と説明した。
今回の勧告はICI発足後2回目。先月末出された最初の勧告書では、東ミンドロ州の約2億9000万ペソの洪水対策事業についてザルディー・コー前下院議員と公共事業道路省職員十数人に対する刑事訴追が勧告された。
▽ロムアルデス氏まで及ぶか
ICIのレイエス委員長は「汚職との戦いでは誰も例外にはならない」と強調。この言葉が、ザルディー・コー氏と並んで議会における汚職の中心人物として名が挙がっている、マルコス大統領のいとこで「側近」のロムアルデス前議長にも及ぶかどうかが今後の大きな焦点の一つとなる。
汚職関与疑惑への対応のため先月下院議長職を降りた後も、最大与党ラカスCMDの総裁として隠然たる力を持つロムアルデス氏。同氏に追及が及ばなければ、ラカス党の後援で新議長に就任したファウスティーノ・ディ下院議長と下院全体への影響力を維持する公算が高く、来年2月に解禁されるサラ副大統領への弾劾訴追手続きも再度推し進められる可能性がある。
一方で、ロムアルデス氏に刑事訴追が及べば、求心力が一気に衰え、2028年の大統領選で最有力候補のサラ氏に対する大きな追い風となる。(竹下友章、ロビーナ・アシド)




