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1月14日のまにら新聞から

新聞論調・宗教が持つ力とは 善悪の概念

[ 697字|2024.1.14|社会 (society)|新聞論調 ]

 ブラックナザレ祭りの市内巡行「トラスラシオン」で、何百万人もの信者が像をひと目見て触ろうとせめぎ合う光景は、いつ見ても圧巻だ。ある信者は、コロナ禍でも市内巡行が決行され、人々が祈り、ブラックナザレ像が奇跡を起こすことが許されていれば、コロナの死者はもっと少なかったのではと語った。

 残念ながら祈りの力を見る機会をすでに逃したため、それが本当に「奇跡」をもたらしたかは誰も知り得ない。それでも、奇跡を信じることに関しては、それが信仰というものだろう。

 人生には説明できないことがたくさんある。空に星がある理由や天地創造、生命の始まり、最愛のペットが死んだ時、新型コロナで家族を亡くした時など。子どもが「天国に行くのだよ」と言われ少し安心したように、科学の領域外にある宗教のスピリチュアルな部分は、時に説明できないことに説明を与え、子どもの未知なるものへの恐怖心を払拭する。

 公立学校での宗教教育は任意だが、少なくとも善悪概念や自分の行動に対する説明責任、そして悪行の結果については基礎教育で教えられた。そのはずが、殺人や汚職、暴力が蔓延し社会が混乱しているのを見ると、比人にはこの基本的な概念が欠けているのではと疑いたくなる。カトリック信仰のアジアのとりででありながら、なぜ殺人犯罪率が高く、汚職で悪名高い政府なのか。授業で教えられなかったからか?または聖書のフィリピン語への翻訳で何かが失われたからか?

 比には社会の支えとなり良き統治指針となる儒教的な信念がない。あるのは宗教であり、カトリックのある意味、支配的な信仰なのである。(10日・スター、アナマリー・パミントゥアン)

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