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7月30日のまにら新聞から

サッカーが輝き続けるために 持続可能なプログラムを

[ 910字|2023.7.30|文化 スポーツ (culture)|新聞論調 ]

ニュージランド開催である今年の女子サッカーワールドカップではスタジアムの改修に1900万ドル(約19億円)が投じられた

 ニュージランド開催である今年の女子サッカーワールドカップではスタジアムの改修に1900万ドル(約19億円)が投じられた。精密な照明設備や最新のLED投光照明が設置されたこともあるが、なぜかフィリピン代表の姿がひときわ鮮明に映る。

 会場やテレビを通じて試合を見ていたファンはエースディフェンダーのハリ・ロング選手が比国家斉唱するたびに涙が頬を伝うのを目にしただろう。

 2人のディフェンダーに囲まれながら、サリーナ・ドールデン選手が決めた強烈なヘディングシュートも国民の記憶に刻み込まれたシーンだ。

 このゴールは比男女通じて史上初であり、さまざまな壁を破り続けてきたチームにとって歴史に刻まれた試合となった。アレン・スタイチッチ監督も「比スポーツ史における特別な瞬間」と称賛。

 しかし、これまでの栄光の瞬間と同様、避けられない疑問がある。次はどこへ行くのか。

 10年以上前、東南アジア競技大会でサッカー男子代表がベトナムを下して「ハノイの奇跡」と呼ばれ、プロリーグまで誕生した。そのリーグは今どこにある。

 ワールドカップでの勝利はさらに大きな瞬間だ。大会後はアジア大会があるが、その後は。サッカーはどう進むのか。

 女子代表は今回、競技としてだけでなく、国旗と国を背負い戦っていることを示した。そして若い子どもたちが夢を実現できる道筋を開拓しようとしている。

 マカティ・フットボール・クラブが集めた若いサッカー選手たちが遠方のスウェーデンで開催されたユーストーナメントで体格が2倍も違う少女たち相手に熱戦を繰り広げた。しかし、歓声がなくなったらどうなる。

 スポーツの重要な要素は大衆の声援だ。比フットボール連盟や女子代表後援者はこの女子代表の成功の利益を維持するために支援する必要がある。しかし、他の人びとが協力するには比でサッカーファンの絶え間ない歓声がなければならない。

 安定したサッカープログラムの誕生には草の根からプロへの道が拓かれる必要がある。そして才能ある若者が目指す持続可能なリーグの存在が不可欠だ。もう一度問う。投光照明が消えたらどうする。(29日・インクワイアラー)

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