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4月30日のまにら新聞から

国民の足、ジプニー廃止のジレンマ 強引な政策より慎重な計画を

[ 648字|2023.4.30|社会 (society)|新聞論調 ]

私は米国在住だが、頻繁に来比しながら「国民のために動かないことが多い」米政府を見ている身として、ジプニーの廃止には反対の立場だ。

 私は米国在住だが、頻繁に来比しながら「国民のために動かないことが多い」米政府を見ている身として、ジプニーの廃止には反対の立場だ。インドのタージマハル、フランスのエッフェル塔のように、ジプニーは比のアイデンティティーのひとつだ。一度姿を消してしまえば、永遠に取り戻すことはできないだろう。

 陸運局(LTO)は、黒い煙を吹かして街をゆくジプニーが環境に優しくないことを理由に廃止を掲げている。しかし、高価な電気自動車にただ置き換えるのでは、化石燃料の発電所に二酸化炭素排出口を移すだけで、総量は改善できない。

 さらに、ジプニー運行者は新しい電気自動車への移行に200万ペソを必要とするのに対し、政府の補助金はわずか20万ペソ。これでは移行できないケースも稀ではなく、むしろ既存の交通システムも壊滅的な打撃を受けるだろう。また、乗車料金の値上げは不可避で、多くの比国民の生活を支える移動の足が、手の届かないものになってしまう。例えば補助金を使って現在のジプニーを電気モーターで改造するなど、現実的な代替案が必要だ。

 1台1台カスタマイズ・デザインされた、世界でもユニークなジプニーは、比のアイデンティティーであると同時に、運行者の誇りでもある。「やるかやられるか」といった強引な政策ではなく、環境負荷への責任、交通業界で働く人々、そして何より日常的にジプニーを利用する比国民のために、有権者の意志と一致する合理的で慎重な移行計画が求められている。(16日・マニラタイムズ、読者からの手紙)

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