「日刊まにら新聞」ウェブ

1992年にマニラで創刊した「日刊まにら新聞」のウェブサイトです。フィリピン発のニュースを毎日配信しています。

マニラ
33度-27度
両替レート
1万円=P3,680
$100=P5,595

3月20日のまにら新聞から

【新聞論調】月額200ペソの補助金 貧困層への侮辱

[ 1080字|2022.3.20|社会 (society)|新聞論調 ]

政府は複数の議員や消費者団体が提案した石油製品への物品税と付加価値税の課税停止ではなく、貧困層への月額200ペソの補助金交付を承認した。

 政府は複数の議員や消費者団体が提案した石油製品への物品税と付加価値税の課税停止ではなく、貧困層への月額200ペソの補助金交付を承認した。

 しかし、パンデミックによる失業や収入減、生活費の上昇に直面し苦しむ貧困層に対し、このわずかばかりの補助金は侮辱以外の何物でもない。

 「月200ペソの補助金の根拠は何だ?」とジープニーの運転手やその他の輸送関係者で組織されたピストンが問いかけた。燃料価格の高騰で最も大きな打撃を受けた団体の一つである。ピストンはこの提案をした(その後ドゥテルテ大統領が承認した)カルロス・ドミンゲス財務長官に「再考」を求めている。ピストンのフロランダ委員長は「最低賃金と200ペソの補助金でどうやって生活をしろというのか」と憤っている。

 また都市貧困者団体「アナックパウィス」は、200ペソの補助金を「唾」に例えた。ドミンゲス財務長官が貧困層を蔑視しているとさえ感じられる故だろう。

 政府関係者にもこの補助金に対して異議を唱える者がいる。グレース・ポー上院議員は「はした金」と表現し「1日6・66ペソでは最低距離のジプニーにさえ乗れない」と付け加えた。

 ドミンゲス氏は石油製品への課税停止ではなく、補助金の支給を提案した理由について「課税を停止すれば今年の税収は1056億ペソ失われる。しかし、約1200万世帯への補助金は331億ペソの負担で済む」と回答している。これは不可解だ。1200万世帯に200ペソ支給しても合計は24億ペソだ。複数月の支給を見込んでいるのかもしれないが、緊急事態なのだから331億ペソをそのまま各世帯に支給すべきではないか? そうすれば世帯当たり約2700ペソになる。その後追加補助に向けた新たな財源を見つければ良い。

 フランクリン・ドリロン上院議員は、税制改革法を駆使し物価上昇を抑えるようドミンゲス財務長官に促した。さらに会計検査院は、中小企業に分配されるはずだった資金の半分以上である49億9000万ペソが未使用のままだと指摘し、「未使用の資金は最も必要とされる案件に投入することができる」と明かしている。

 また30人以上の関係者が行方不明になっているにもかかわらず、ドゥテルテ大統領が停止命令を拒否しているオンライン闘鶏は極めて収益性が高く、政府にも月6億4000万ペソほどの税収を与えている。

 物価上昇を抑える方策や補助金の財源はまだまだほかにもあるはずだ。貧困層に救いの手を差し伸べるのであれば、政府には真の配慮でもって臨むことを切望する。(19日・インクワイアラー)

新聞論調