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9月19日のまにら新聞から

FP論争より重要なこと 比人のアイデンティティー

[ 707字|2021.9.19|社会 (society)|新聞論調 ]

 フィリピンは自らのアイデンティティーを求め闘い続けている。比は長い間、スペインや米国など他国の統治下に置かれてきた。そのため政治や経済が安定せず、国民の精神統合もなされてこなかった。月日は流れ、近年国語におけるF(フィリピノ)とP(ピリピノ)の争いが持ち上がった。

 2013年、国語委員会(KWF)は国名をFilipinas、国民をFilipinoと表記する決議を行った。その8年後、KWFの新委員長が1987年共和国憲法のタガログ語訳で使用される表記にのっとり、国名をPilipinas、国民をPilipinoとつづることに合意した。

 KWFによると、大学の各学科や名もない組織が今回の変更を後押ししていたというが、判断はそこに委ねられるべきだっただろうか。さらに急に変更する必要性はあったのか。言語は大学で初めて学ぶのではなく、初等教育から浸透していくものだ。

 この国には100以上の言語コミュニティーが存在している。それは「フィリピノ」へとまとめ上げられ、他国との独立戦争を戦い、マルコス政権を崩壊に導いた。その上に築かれた1987年の自由憲法とその後30年間の歩みを忘れてしまったのだろうか。単に表記の問題ではないのだ。「フィリピン人」であることは特別であり、民族主義の発展につながっている。

 これが私たちの国の物語だ。矛盾に満ち、権力闘争に明け暮れる国。いつでも通り名を変えられる国。移り気な国。アイデンティティーを探し続ける国。国のリーダーが私たちの文化と遺産を守るまで、自分たちが何者なのかを理解するまで、模索や奮闘は続いていくだろう。

(13日・スター、サラ・デグスマン)

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