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8月15日のまにら新聞から

「私たちはやり遂げた」のか 五輪とナショナリズム

[ 648字|2021.8.15|文化・スポーツ|新聞論調 ]

 世界中の政権が、スポーツはナショナル・アイデンティティーを強めることができると認識している。特に五輪は国のステータスとなる。歴史的にも各国政府は「私たちはやり遂げた」と国民に伝えるために五輪を使ってきた。1964年、日本は東京五輪を第2次世界大戦からの完全な復興の証しとした。

 五輪の政治的価値こそ、巨額をかけて開催を誘致するゆえんだ。今回、オリンピック委員会が206の出場国を認める中、全選手の約半分をわずか14カ国が占めた。そのうち、GDP世界2位と11位の中国とロシア以外は経済協力開発機構(OECD)加盟国だ。この14カ国がメダルと新記録を独占している事実にも驚かない。

 とはいえ、残りの192カ国にとっても五輪の影響は大きく、メダル数や超大国のステータスよりも、大会参加経験を国民が共有することに意味がある。

 一方で、勝利への集団的な渇望はマイノリティーに対する差別を軽減させる。また、新しい国が国家意識を高める機会にもなり、内部分裂がある国の愛国的な国造りの貴重な機会でもある。国民が共通の経験をすることで、民族間の不信感が軽減され、主にアフリカで国内の民族衝突を劇的に緩和することが分かっている。

 最近では、テニスの大坂なおみの活躍や発言が、民族やジェンダーの古い偏見をなくすために多くの日本人をも動かしてきた。大坂が東京五輪で灯した聖火は、重要な社会的分岐点としての意味を持つようになるだろう。(7日・インクワイアラー、ケロッグ経営大学院教授 ナンシー・キアン)

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