反汚職デモが拡大していることを受け、フィリピン国軍は、非常事態にいつでも全軍が緊急出動できる「レッドアラート」体制に入った。ネパールでは今月SNS禁止措置に端を発した暴動で政権が崩壊。インドネシアでも先月から政府への不満を背景に発生した抗議活動が暴動化したことを受け、類似の事態に発展するリスクに備えたものとみられる。
在比日本国大使館は15日に、「抗議活動は予告なく拡大する可能性があり、交通渋滞や治安当局との衝突など不測の事態が発生する恐れがある」として在留邦人に注意を呼びかけた。
一方、マルコス大統領は15日、「私が大統領でなかったら、彼らと一緒に街頭に出て抗議していたかもしれない」と述べ、さらに「私も怒っている。皆、怒るべきだ」と語気を強めた。その上で、「抗議は平和的なやり方ですべきだ」と述べた。
14日にラジオ番組に出演した比国軍のパディリャ報道官は、国軍が12日からいつでも国家警察の支援に出動できる体制に入っていることを明らかにした。
同報道官は「国軍は平和的な集会の権利、意見表明の権利を尊重する」とした上で、「正当な抗議活動が『ハイジャック』される恐れもある」と指摘。「いかなる個人・組織にもこの状況を暴力、分断、無秩序を作るために利用させない」と宣言した。
また、「マルコス政権に対する国軍の支援を取り下げるよう求める声も上がっている」との質問に対してパディリャ氏は「そうした要請は拒否する」と断言。「国軍は国民と憲法に対し揺るぎない忠誠を持っている」とした上で、「解決は民主主義制度と法の支配の枠内で見出されるべきであり、『憲法を越えた方法』を通じて行われるべきではない」と述べた。
台風・熱帯低気圧の連続襲来により、長年解決しない豪雨後の冠水問題が再注目された7月、マルコス大統領は施政方針演説で治水事業の汚職問題の徹底追及と情報開示を宣言。議会でも治水汚職問題の追及がはじまり、そのあおりでエスクデロ前上院議長が請負業者から献金を受け取っていたなどとして解任。大統領の盟友であるロムアルデス下院議長も問題となっている請負業者から汚職の黒幕の一人として名指しされる事態となっている。
各市民グループは先週から各地で抗議活動を開始。21日には首都圏マニラ市リサール公園とケソン市エドサ通りの「ピープルパワーモニュメント」で複数の市民団体が大規模抗議活動を実施する予定だ。 (竹下友章)