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犠牲を記憶し平和を呼びかけ 慰安婦遺族らが集会

2025/8/15 社会
元慰安婦への正義と平和を求める集会に参加した遺族・支援者ら=14日、首都圏マニラ市で竹下友章撮影

ポツダム宣言が受諾された8月14日に合わせ、元比人慰安婦の遺族が正義と平和を求める集会

日本のポツダム宣言受諾から80周年を迎えた14日、太平洋戦争中に日本軍から性加害を受けた比人女性の遺族らが、元慰安婦団体「リラ・ピリピナ」、元慰安婦支援ネットワーク「フラワー・フォー・ロラズ」、女性政党「ガブリエラ」が共催する集会に参加した。参加者らは「ロラ(おばあさん)たちに正義を」「ロラたちを記憶に残そう」「戦争に反対」などの声を挙げた。元慰安婦は高齢化し、多くが死亡しているため、元慰安婦の参加は今年もなく、代わりに子どもや孫など遺族7人が参加。それに支援者を含めた参加者が、既に亡くなった元慰安婦の遺影に花を捧げた。

 参加した「フラワー・フォー・ロラズ」のテレシタ・アン・シー代表は、90年代に名乗り出が始まった元慰安婦の数は、高齢化によって約200人いたのが26人まで減少したと説明。「リラ・ピリピナ」のシャロン事務局長によると、最初の慰安婦団体である同団体で生存する元慰安婦の数は10人を切り、ほとんどのメンバーが寝たきりや外出が困難な状態で、会話も困難になりつつあるという。

 今回の集会場所は、かつて慰安婦像があったマニラ市の跡地。同像は、「日本政府を非難する意図はない。だが彼女たちの記憶を忘却させてもいけない」(シー代表)との趣旨で2017年12月に建立され、台座の碑文も「1942~45年の日本統治下で虐待の被害にあった全ての比人女性の記憶である」と中立的な記述となっていたが、度重なる日本政府からの抗議の後、比政府は排水工事を理由に18年4月に撤去。その後制作者のアトリエに一時保管されたが、何者かに盗まれ、現在まで行方不明となっている。

 ▽母の遺志を継いで

 集会でマイクを握った中には、長らく語り部として活動を続け昨年94歳で亡くなった元慰安婦エステリータ・ディさんの娘、エリザベス・アティリョさん(69)がいた。「私が生きている間に正義が実現するとは思っていない。だが大事なことは、私のような経験を若い世代の女性たちにさせないことだ」と活動に込める思いを生前に語っていたエステリータさん。そんな母が死去する前に残した言葉は「正義のための闘いを継いでほしい」だった。

 「あなたが求める正義とはなにか」。この質問に、アティリョさんは「(国家としての)謝罪、賠償」のほか、「母たちを歴史の中に入れてほしい」と語った。

 「日本政府に何を求めるか」との質問には、「母たちの魂が安らかになれるよう、日本の首相には第二次世界大戦で被害を受けた彼女たちに正義を与えてほしい」と希望を語り、「フィリピン政府は支援すべきだが今までなかった。多くの大統領が約束したが果たされたことはない」とした。

 慰安婦像撤去については「長年求め続けてきたものが、ある朝取り去られ、とても心が傷んだ。ドゥテルテ政権期に撤去された像を、マルコス大統領に再度設置してほしい」と語った。

 ▽進む新慰安婦像計画

 昨年10月に新たな慰安婦像を設置する計画があることを発表していた「フラワー・フォー・ロラズ」のシー代表は、同計画について、ブラカン州サンイルデフォンソ町に残る「バハイ・ナ・プラ(赤い家)」を、慰安婦を顕彰し、高齢女性用の多目的な「霊廟」として再建し、その中に慰安婦像を設置する内容だと明らかにした。バハイ・ナ・プラは、戦時中に日本軍の宿舎として利用され、そこに連行された複数の女性が一定期間性被害を受けたと訴えている場所だ。

 同場所で被害に遭った女性らによる団体「マラヤ・ロラズ」は2019年に国連女子差別撤廃委員会(CEDAW)に申し立てを行い、同委員会は23年3月に同団体の主張を一部認める判断を下した。同委員会は比政府に対し、元慰安婦への救済のほか、記念施設の設置や「戦時性奴隷制」の教育を教育課程に盛り込むことなどを勧告。同勧告を受けてマルコス大統領は5月、元慰安婦への支援をするよう各省庁に指示を出している。

 シー代表は「マルコス大統領の指示により、比女性委員会を中心として設置された慰安婦問題政府タスクフォースと関連団体との初めての大規模会議が、今年3月に実施された」と報告。そこでバハイ・ナ・プラの再整備計画を議論し、比人権委員会などを中心に前向きな手応えを得たことを明らかにした。

 現在はバハイ・ナ・プラの土地所有者との交渉を進めており、また、サンイルデフォンソ町長も霊廟整備計画に「非常に協力的だ」とした。また、同計画は「リラ・ピリピナ」、「マラヤ・ロラズ」、「フラワー・フォー・ロラズ」など各団体が共同で支援していると説明した。

 シー氏はまた、「無辜(むこ)の比人子女を殺害した(日本軍の一部である)カミカゼ特攻隊の顕彰碑をパンパンガ州に建てることが許されているのなら、慰安婦のための霊廟を建てることを何が妨げるのか」と指摘した。

 マニラの慰安婦像撤去を巡っては、設置当時、「わが国の立場と相容れない」として再三にわたって遺憾の意を示し抗議をした日本政府に対し、像撤去後「日本への批判を意図せず、比人が自国民の犠牲者を記憶に残すことすら、日本は認めないのか」という反感が、当事者だけでなく大手メディアの中からも上がった。

 「この計画による慰安婦像が建設されたとき、日本大使館はどう対応するか。これまでと同様に遺憾の意を表するのか」とのまにら新聞の質問に、在日本国大使館は「仮定の質問に答えることは差し控える」と明言を避けた。

 その上で、当事者が求める「正義」の問題については、「先の大戦に係る賠償ならびに財産および請求権の問題について、日本政府は、サンフランシスコ平和条約および日比賠償協定等に従って誠実に対応してきており、フィリピンとの間では、個人の請求権の問題を含め、法的に解決済みとの立場」と説明した。(竹下友章)

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