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5月10日のまにら新聞から

懐かしい日本の風景をセブで 4年ぶりセブ盆踊り開かれる

[ 2152字|2023.5.10|社会 (society) ]

マンダウエ市でセブ盆踊りが6~7日に4年ぶりに開催された。コスプレイヤーも多く参加

(上)アニメショップのカプセルガチャを楽しむ来場者=6日、マンダウエ市で深田莉映撮影。(下)和太鼓バンドGOCOOとDAREDEMO HEROの子どもたちによるパフォーマンス。会場の熱気は最大となった=7日、マンダウエ市で深田莉映撮影

 セブ州マンダウエ市のバイホテルそばの広大な空き地で、セブ日本人会主催の第6回盆踊り大会が6~7日に開かれた。セブ島最大の日比交流イベントで、今回は新型コロナによる中止を経て4年ぶり。70を超えるブースや店舗が並び、じりじりと太陽が照り付ける中多くの来場者でにぎわい、2日間ともフィナーレの花火が上がる午後10時ごろまで終始盛り上がりを見せていた。

 出店には、大阪のたこ焼きや焼きバナナのトゥロンなど様々な飲食物のほか、アニメショップやフォトブース、日本人ネイリストによる出張ネイルサロン、着物の着付けなど多種多様な体験ができる場も多かった。綿あめやスーパーボウルすくい、ヨーヨー釣りといった昔懐かしさを感じるものもあり、会場内の警備員らが一緒に盛り上がる場面も見られた。日本からはゴーゴーカレーや和菓子工房あん庵なども出店していた。

 メインステージでは、アーティストやセブ在住グループのパフォーマンスに加え、コスプレ大会やドライマンゴーの早食い、アニメソングのカラオケ大会など、参加型のステージも多く、多彩な演出で会場を盛り上げた。2日間ともにメインステージのフィナーレを飾ったのは、和太鼓バンド「GOCOO」のパワーみなぎる演奏。セブ拠点の日系NGO「DAREDEMO HERO」の子どもたちも一緒に出演し、力強い音を響かせた。最後には来場者の多くが輪になって盆踊りを踊り楽しんだ。

 様々なステージの合間にはベルが鳴らされ、日本の精神「来た時よりも美しく」を実践する取り組みとして、近くに落ちているゴミを拾いゴミ箱に捨てる「クリーニングタイム」が設けられた。

 ゴールデンウィークで3日からセブに旅行に来ていた高田和広さん(24)と下山唯人さん(24)は、「チラシで盆踊り開催を知り来てみた。コスプレイヤーもたくさんいて、(出店には)アニメグッズが多く、日本のアニメ好きがかなり多いんだなという印象を受けた」と話した。6日の深夜便で帰国した2人はボホール島も訪れ、「フィリピンは全部が面白かった」と笑顔で振り返った。

 3カ月間の留学中で、英語学校の友人らと一緒に来ていた梶谷晃士さん(26)は「ゲームや日本のおもちゃもあってすごい。めちゃくちゃ楽しいし、懐かしい日本の感じがする」と声を弾ませた。

 ▽コスプレ交流の場

 フィリピン人の多くは日本の人気アニメのコスプレで来場。あちこちで記念撮影をする様子が見られた。

 「進撃の巨人」に登場するハンジのマントを羽織っていたカイエ・サンチェスさん(15)は、ほかのコスプレイベントにも参加しており、セブ盆踊りの参加は2018年に続き2回目という。「アニメが大好きで、いろんなコスプレをしている人にも会えるから、復活して嬉しい」と話した。

 ソーシャルゲーム「原神」のキャラクターに扮した、同じハイスクールに通う2年生4人は、衣装の完成度も高く一際目立っており、撮影を希望する人たちとポーズを決めて写真に収まっていた。「雷電将軍」の衣装姿のニッキ・ロサノさんは「暑いけれど、慣れてくる」と胸を張り、「この4人はお互い同じアニメ好きと知って仲良くなった。私は今日がコスプレデビューの日!」と興奮気味だった。

 さらに、来場と同時に緊張感のある注目を集めたのは、第二次世界大戦における日本軍の制服に、旭日旗を掲げたマリオン・マカベンタさん(54)ら3人。サンペドロ要塞で週末にガードを務めているという。普段ガードとして植民地時代のスペイン軍や米軍の制服も順番に着用しており、「日本のお祭りということで日本の「制服」を着てきた。私たちはオープンマインドで、敵国だった人たちが良い・悪いではなくニュートラルに歴史を伝えている」と誇らしげに語り、終始和やかに撮影に応じていた。

 ▽出店で今後への期待も

 オンラインショップのほか首都圏マカティ市にショールームを構える比最大級のアニメショップ「アニポリウム」は、首都圏外での出店はバギオに続き2回目。ザブ・レシオ統括部長は、「アニメが好きな人が本当に多く、もはや比人の一部になりつつある。大人になっても見るし、幼少期に見ずに育った人はいないと思う」と、比におけるアニメ市場の可能性に期待を示した。

 同店は今年3月に開催されたマニラの盆踊りでも出店。「マニラでは子どものお客さんが多く、保護者が購入してくれるパターンがほとんどだった。今回のセブはそれだけでなく友人同士で来ているティーンエイジャーや大人も多く、商品の売れ行きや反応を観察しながら、今後のマーケティングや価格帯を考える良い機会になった」と話した。

 日本で福祉系医療法人桜誠会の理事を務めながら、ウズベキスタンで抹茶カフェを手掛ける永井祐斗さんは、DAREDEMO HEROの支援者である繋がりから、今回フィリピンで初出店。「ウズベキスタンで抹茶はまだ健康志向の人が好んでいる印象だが、東南アジアでは抹茶そのものの知名度も高く人気。来日経験がある人は、甘い抹茶ドリンクよりも本場の苦味を求める人も多い」とし、「フィリピンでのカフェオープンも視野に入れていきたい」と手応えを感じている様子だった。(深田莉映)

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