「日刊まにら新聞」ウェブ

1992年にマニラで創刊した「日刊まにら新聞」のウェブサイトです。フィリピン発のニュースを毎日配信しています。

マニラ
35度-24度
両替レート
1万円=P3,705
$100=P5720

4月27日のまにら新聞から

初の軍艦撃沈演習実施 米軍はハイマース、F―35投入

[ 1406字|2023.4.27|社会 (society) ]

バリカタン初の軍艦を撃沈する実弾演習実施。米軍のF―35が誘導弾で退役艦を撃沈

(上)ハイマースに乗り込むマルコス大統領=26日午前9時ごろ、サンバレス海軍教育・訓練本部で竹下知章撮影。(下)F―35から発射された誘導弾が命中し炎上する比海軍の退役艦=26日午後、比国軍提供

 サンバレス海軍教育・訓練本部で26日、史上最大規模で実施されている比米合同総合軍事演習バリカタンで、退役した比海軍のコルベット艦BRPパンガシナン(PS―31、56・2メートル)を撃沈する実弾演習を行った。比米合同演習で軍艦を攻撃する実弾演習を行うのは史上初。米軍はロシアの軍事侵攻に対するウクライナ軍の反転攻勢を可能としたとされる高機動ロケット砲システム「ハイマース」や「世界最強の戦闘機」の一つとされる第5世代戦闘機F―35ライトニングを投入した。この日の演習には比米両軍から約1400人が参加した。

 今回のバリカタン最大の目玉である同日の実弾訓練には国軍の最高司令官であるマルコス大統領も参加。同日午前9時ごろに軍用ジャケットで登場した大統領は、演習観察地に停められたハイマースに乗り込んで内部を視察した後、4階建ての監視塔からカールソン駐比米国大使と約2時間攻撃を見守った。バリカタンの報道官を務めるロヒコ比陸軍大佐によると、少なくとも同報道官が担当し始めた2017年以降で大統領の視察は初めて。観察地にはオブザーバーとして参加したとみられる自衛隊員の姿もあった。

 陸上実弾演習後、ロヒコ報道官は「演習は特定の敵国を想定したものではなく、米軍との相互運用性の装備品運用の練度向上が目的」と強調したが、一方で国軍のアナウンスでは「標的のPS―31はスカボロー礁から235キロメートルの海上に配置されている」とわざわざ言及。演習地の対岸に位置するスカボロー礁は、2016年の国際仲裁裁判所判断で比の排他的経済水域(EEZ)内であることが認められているものの、現在中国が実効支配し、軍事拠点の建設も確認されている。比米両政府は建前としては否定するものの、過去最大の合同演習には南シナ海における軍事拠点を橋頭堡(きょうとうほ)とした中国の軍事侵攻に対するけん制の意図も透ける。

 ▽最強戦闘機がとどめ

 国軍のアナウンスによると、今回の演習の標的は比の領海ぎりぎり内側となる海岸線から12カイリの海上に配置された退役コルベット艦と、海岸線から4・5カイリに配置された演習用の浮遊標的「キラー・トマト」の二つ。

 最初の攻撃は午前6時半に比海軍が開始。比海軍保有艦で最大の誘導ミサイル登載フリゲート艦BRPホセリサール=107メートル=を投入し、敵艦の通信システム無力化を想定した攻撃を行った。その後9時過ぎから米陸軍が沿岸からハイマースを6発発射。続いて比陸軍が海岸線に複数配置された105ミリ、155ミリ榴弾(りゅうだん)砲を約30発発射した。ただし、ロヒコ報道官によるとハイマースは目標に着弾しなかった。

 地上攻撃の後は両軍航空部隊による攻撃を実施。米空軍は主要戦闘機F―16のほか、「世界最強」の戦闘機の一つとされる第5世代戦闘機F―35「ライトニング」を投入。比空軍の攻撃機A―29、戦闘機FA―50の支援攻撃を交えながら、米海兵隊のワスプ級強襲揚陸艦USSマキン・アイランド=257メートル=から飛び立ったF―35が誘導爆弾を命中させ、午後2時55分、標的の退役コルベット艦PS―31の沈没が確認された。

 米軍の対地攻撃型機AC―130「ガンシップ」も待機していたが、出動前に撃沈したため出番がなかった。沿岸防衛作戦における空対艦戦力の優位性を示す結果となった。(竹下友章)

社会 (society)