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7月18日のまにら新聞から

サンチャゴ要塞で戦争パネル展 比第二次世界大戦記念財団が開幕式

[ 1256字|2022.7.18|社会 (society) ]

戦争の遺跡が残るマニラ市イントラムロスのサンチャゴ要塞の一角で16日午前に戦争パネル展の開幕式が行われ、ラクナ・マニラ市長ら140人が集った

(上)サンチャゴ要塞の中にあるアメリカンバラックと呼ばれる戦争遺構前で行われた戦争パネル展の開幕式で挨拶するラクナ・マニラ市長/(下)パネル展の会場でメディアの取材に応じる「ワータイム・ヘリテージ・ギルド・フィリピン」のメンバーたち=7月16日澤田公伸撮影

 マニラ市イントラムロス地区にある観光名所の一つで第二次世界大戦中に日本軍憲兵隊本部が置かれたことでも知られるサンチャゴ要塞内にあるアメリカンバラックと呼ばれる戦争遺構で16日午前、戦争パネル展の開幕式が行われた。式にはラクナ・マニラ市長が参加したほか、アメリカ大使館のジョン・グローチ広報顧問やスティーブン・ロビンソン駐比オーストラリア大使、ジェラルド・アレドンド駐比メキシコ大使らかつて連合国軍に兵士を派遣した国の在外公館の代表らも出席し、それぞれスピーチを行った。

 同じく開幕式でスピーチしたマニラ市街戦の遺族たちの団体「メモラーレ・マニラ1945財団」のホセ・カバルス会長は自身が経験した戦争による破壊と多くのマニラ市民の犠牲について触れた後、「戦争については特に若い世代はここで何が起きたのかを知らない。この展示が歴史を少しでも勉強しようとする新しいトレンドを生むきっかけになって欲しい」と歴史を学ぶことの大切さを訴えた。

 また、医師でもあるラクナ・マニラ市長もスピーチで「過去に起きた出来事は飲み込むと苦い錠剤のようなものかもしれないが、その教訓は我々により良い市民になる機会をもたらす。来年はマニラ市が解放されて78周年を迎えることから、同様な第二次世界大戦を回顧するイベントを市内の別の場所でも展示し、市民に我々の先祖たちの勇敢さを伝えたい」と述べた。

 約140人ほどの参加者たちは開幕式の後、元憲兵隊の建物としても使われていた戦争で廃墟となった戦争遺構の内部に移動し、日本軍によるフィリピン占領について英語で解説し、貴重な写真が数多く掲載されたパネル展示を興味深そうに鑑賞していた。パネル展はフィリピン第二次世界大戦記念財団(マリオ・ベニパヨ会長)が主宰し、イントラムロス庁の協賛を得た。フィリピン大歴史学部のリカルド・ホセ教授や同財団の副会長を務めるデスリー・ぺ二パヨ氏らが資料提供などを行い製作・展示された。

▽軍服を着て参加の若者も

 展示会場では式典参加者らに加えて米軍や日本軍などの軍服や軍装備品を身に着けていたフィリピンの若者たちのグループもいた。「ワータイム・ヘリテージ・ギルド・フィリピン」という団体のメンバーたちで、普段はIT企業や外資系企業などで働きながら定期的に会合を開いて戦争について勉強したり、博物館などで戦争関係のイベントがある時に当時の軍服や装備品を身に着けて参加するという。理事の一人で日本軍の軍服を着ていたダニロ・アントニオさん(43)は「実は母方の祖父が日本人だった」とスマホで祖父の写真を示した上で「自分たちは日本軍と米軍のどちらかが悪いということではなく、戦争の実態を知る必要があると思う。このような展示は良いきっかけになる」と語り、他の見学者たちと一緒に写真を撮るなどして交流していた。

 同展示はサンチャゴ要塞への入場料を支払っていれば無料で見学できる。当面は年内一杯での展示を予定しているという。(澤田公伸、ロビーナ・アシド)

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