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12月31日のまにら新聞から

容疑者特定するも未解決 邦人女性殺害から5カ月

[ 1411字|2020.12.31|社会 (society) ]

検証3・ラグナ州カブヤオ市宅で1人暮らしの邦人女性が強盗に殺害されてから5カ月

生前の前沢さんを振り返るエドウィン・バグタスさん=2020年12月21日、ラグナ州カブヤオ市で岡田薫撮影

 2020年8月2日早朝に、ルソン島ラグナ州カブヤオ市のビレッジ内の自宅で、1人暮らしの前沢礼子さん(82)が2人組の強盗に手足を縛られ、口をタオルで塞がれた状態で絞殺された。新型コロナ禍で治安の悪化が懸念されていた中、邦人社会に衝撃を与える事件だった。

 事件から5カ月。国家警察カブヤオ署は、事件の1カ月後には容疑者を特定していたが、逮捕には至っておらず、未だ解決に向かっていない。

 ▽未成年含む犯人像

 12月21日にビレッジを訪ねると、入り口の警備員は「この前まで1人だった警備員が今は4人いる。見回りもシフト制で行っている」と話した。現在ビレッジ内に住む日本人は10人。うち2人はビレッジ内の高齢者福祉施設に身を寄せる。新型コロナの流行で日本へ帰国中の人もいる。

 カブラオ署の捜査官によると、犯行時刻前後に通りかかった2人組の男の顔と名、住所は監視カメラの映像から割れている。1人は16歳の少年で、もう1人は成人。2人は隣人同士だという。

 「彼らはビレッジ裏手の鉄道線路付近に住む。特定の仕事はなく、前からバランガイ(最小行政区)の問題児だった」と言う。

 ▽遅れる容疑者逮捕

 しかし、裁判所からの逮捕令状は未だに出ていない。2人いる同事件の捜査官のうち、22日に話した捜査官は、事件について尋ねた際、他に多くの事件を抱えているからか、即座に事件を思い出せない様子だった。

 解決の遅れについて「通訳兼運転手の女性による陳述書の提出を待っているが、警察署にまだ現れない」と不満を口にした。

 「盗難にあった物品や値段の特定をネット上で照合しようと探してみたが、判別が難しい。彼女なら前沢さんの家から盗られたものの正確な価値などを特定できるはずだ」と話す。一方で、通訳兼運転手の女性は捜査官に「私用で忙しい。日本にいる前沢さんの養子の女性に頼んでほしい」と話しているという。養子の女性の連絡先を知らないという捜査官は「前沢さんをより知っているのは通訳の女性で、彼女の協力が必要だ」と強調する。まにら新聞は通訳の女性に改めて取材を申し込んだが、返事はいまだにない。

 ▽生前の前沢さん

 前沢さんの自宅から300メートルほどの所に、1996年にできた民間の高齢者福祉施設がある。前沢さんや18年に病気で亡くなった前沢さんの夫も頻繁に通った場所だ。同施設には退職者査証を持つ日本人や中国人、ドイツ人、米国人らが入居していたが、現在は高齢の滞在者が減少。別館で日本語を学び、日本行きを目指す訓練生の多くが部屋を借りていた。

 同施設で働くエドウィン・バグタスさん(52)は10年間日本で働いた経験を持ち、前沢さん夫妻の銀行手続きやその他の支払い、買い物時の通訳や代行をしていたこともある。礼子さんについて「夫の死後、悲しげな表情を見せることもあったが、日本人の友人はいたし、元気そうに見えた」と振り返る。

 ▽事件の早期解決を

 バグタスさんは事件の2週間前に前沢さんから「庭師が自宅脇のゴミの回収や植物への水やりを終えていない」との苦情の電話を受けていた。それが前沢さんと最後の会話で「事件を聞いて駆けつけ、ショックでただ涙が流れた」と話す。

 バグタスさんは「警察の動きは遅すぎる。一刻も早い事件解決を願っている」とも述べた。(カブヤオ=岡田薫)

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