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5月2日のまにら新聞から

人権や市民的自由が置き去りに 防疫強化措置下の日常

[ 887字|2020.5.2|社会|新聞論調 ]

 昨日、マカティ市の高級住宅地、ダスマリニャス・ビレッジで警察官がある住民を逮捕しようとする現場を撮影したビデオが朝から人々の耳目を集めた。これには邸宅の庭の水やりをしていた家政婦がマスクを着用せずに路上に出たところを見つけた迷彩服の警官と、その邸宅の主の男性との間で口論となり、男性が地面に投げ飛ばされ、警官が「逮捕する」と叫ぶシーンなどが撮影されている。

 1週間ほど前にはケソン市の路上で、精神疾患を抱えていた元国軍兵士が防疫強化措置の規則を破ったとして警官によって射殺された。この行為は、公衆衛生の危機に際して政府が取っている強権的なアプローチを鮮烈に印象付けるものだった。市民らが大騒ぎしたため射殺した警官は殺人罪で送検されたが、警察の姿勢が抑制されたわけではない。

 コロナウイルスとの戦いという名のもとで人権や市民的自由が置き去りにされてきた。貧困層が大半を占める数千人が規則を破ったとして警察に逮捕されたほか、国家捜査局はパンデミックに関するフェイクニュースを拡散させたとして少なくとも17人を召喚している。この威圧的態度は地方自治体にも飛び火し、セブ市では映像作家の女性がコロナウイルスに関する市の発表について風刺的なコメントをSNSで発信したところ令状なしで逮捕。その数日後にはセブ州コルドバ町で別の女性がスーパーに商品がなく、銀行のATMが故障中だとフェイスブックに投稿し、町長の逆鱗に触れて警察の事情聴取を受けた。

 環境天然資源省では、ある幹部が職員らに「飼い主の手を噛んではいけない」と呼びかけ、政府批判を暗に抑えようとした。労働雇用省は、台湾で介護福祉士として働いている比人女性がSNSでドゥテルテ大統領を批判する投稿をしていたとして前例のない比への強制送還措置を求めている。韓国や台湾、ドイツ、カナダなどを見ると、パンデミックに対処するこれらの国の政府やリーダーたちの示す常識と落ち着き、情報公開の態度をうらやましいと思う。翻ってフィリピンは多くの市民が次の食事を心配し、公務員らは不必要な恐怖を煽るだけだ。(28日・インクワイアラー)

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