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11月22日のまにら新聞から

HIVと結核の「シンデミック」 疾病の社会的要因にも切り込め

[ 815字|2019.11.22|社会|新聞論調 ]

 エイズウイルス(HIV)感染の拡大が危機的な状況にある。国際連合エイズ合同計画(UNAIDS)は、フィリピンでは1日に35人の感染が新たに診断されており、2025年までに20万人が感染するとしている。15〜24歳の若年層でも一定して増加している。

 比は結核にも長く悩まされてきた。保健省は、結核で亡くなる比人は1日に60〜70人にのぼると見積もる。結核の減少ペースは鈍く、昨年の比人患者数は世界全体の1千万人のうち約6%を占める59万超にもなった。

 これら2つの疾病には関連もある。HIVに感染すると免疫力が弱まるため、結核にかかるリスクも高くなるからだ。かかった場合の治療は非常に難しく、実際に結核はHIV感染者の主な死因である。医療人類学者のメリル・シンガーは、貧困のような社会的要因と様々な伝染病の相乗的な作用を指して「シンデミック」(シナジーとエピデミックを合わせた造語)と定義した。結核とHIVもこれに当てはまり、さらなる取り組みが求められる。

 結核については、ドゥケ保健相が大規模検査と治療、民間による告知の義務化などの戦略を打ち出している。HIVについても、保健省の政策により検査を受けやすくなっており、15〜18歳でも親の同意なく検査できる。

 しかし、差別や患者の経済的負担、市民の知識不足など、課題は依然多い。シンデミックの定義が示唆するように、低栄養をはじめ、生活水準や住宅の質の悪さなどの社会的要因にもっと注目すべきだ。

 画期的な対策もある。マニラ市やケソン市などでは公立の病院が夜間診療を行い、タギッグ市ではHIVの検査を望む市民にバイクで保健担当者を派遣するサービスも提供している。こうした努力が実を結ぶには、健康が市民の権利で優先的課題であるという政府高官の認識とともに、彼らのリーダーシップ、そして対策のための予算が必要なのである。(19日・インクワイアラー、ギデオン・ラスコ)

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