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11月22日のまにら新聞から

比人家族の離散はいつまで続く 海外出稼ぎ労働の光と影

[ 791字|2019.11.22|社会 (society)|新聞論調 ]

 比人海外就労者(OFW)を最初に中東諸国に受け入れさせたのはマルコス大統領だった。当時、中東諸国は潤沢なオイルマネーによって建設ラッシュに沸いていた。続いてイメルダ夫人が比人医師や看護師を同地域に送り出す道筋をつけた。

 その後、OFWの人数は膨れ上がり、受け入れ先は東アジアや欧州諸国、オセアニア、アフリカ、中央アジアへと増え続けた。米国でもハワイのプランテーション労働者として昔から比人が働いていたが、今や北米には専門職から工場労働者まで多数の比人が働く。海運業や客船業でも比人船員のいない船は見つけられないほどだ。間もなくロシアでも働く比人が増えるだろう。

 世界の経済はOFWなくして回らないと言ってもよい。比経済もOFWからの送金なしでは成り立たない。昨年の海外送金は約320億米ドル。今年の国家予算の40%にあたる額だ。

 しかし、この経済効果には社会的コストが存在する。多くの家庭で家族関係が崩壊し、子どもたちが違法薬物使用や、うつなどの精神疾患に苦しんでいる。

 さらに頭脳流出、労働力流出も問題だ。国内の病院には医師も看護師も足りず、特に貧困層や中間層が利用する公立病院で人材不足が深刻だ。全国民のための保険医療制度の法律が制定されても、十分な報酬が支払えないために医療従事者が海外に働きに出るばかりでは、制度は絵に描いた餅にすぎない。溶接工や配管工も技術教育技能開発庁の課程を修了すれば海外に職を求める。これから中国が比から英語教師や家事労働者、介護士を求めるようになれば、人材流出はさらに深刻化するだろう。

 このように海外労働のマイナス面は多いが、先進国の労働力不足と、わが国の経済状況や養うべき人口の多さを考えると、比人家族の世界への離散は、少なくとも私の子どもたちが生きている間は止まることがないだろう。(20日・スタンダード、リト・バナヨ)

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