「日刊まにら新聞」ウェブ

1992年にマニラで創刊した「日刊まにら新聞」のウェブサイトです。フィリピン発のニュースを毎日配信しています。

マニラ
34度-25度
両替レート
1万円=P3,680
$100=P5595

12月19日のまにら新聞から

スミフル従業員 大使館前で抗議 殺害 放火などの被害訴え ミンダナオのバナナ農園から

[ 1214字|2018.12.19|社会 (society) ]

日系スミフル・フィリピンの従業員180人が日本大使館前などで正規雇用化求め抗議

日本大使館前で抗議活動を行うスミフル労働者=18日午前8時半ごろ、首都圏パサイ市の日本大使館前で冨田すみれ子撮影(上)/マカティ通りでの抗議では殺害された労働者を悼み、ひつぎが置かれ「ダニーボイ・バウティスタに正義を」との垂れ幕が掲げられた=18日午前10時ごろ、首都圏マカティ市で冨田すみれ子撮影(下)

 住友商事などが出資する日系食品生産・輸出会社スミフル・フィリピン(ミンダナオ地方コンポステラバレー州)のバナナ農園で働く従業員約180人が18日午前、首都圏パサイ市の日本大使館前などで正規雇用化要求と人権侵害の現状を訴える抗議集会を行った。

 スミフル従業員らの労組「NAMASUFA」のジョン・ディソン代表(24)は「日本大使館にも日系企業による比での非正規雇用問題を深刻に捉えてほしい」と訴えた。さらにストライキを行った従業員殺害や相次ぐ銃撃、放火の被害の事実を指摘。「これだけ続くとスミフルとの因果関係がないとは言い難い。悪質な人権侵害だ」と語った。

 スミフルをめぐっては10月31日にはストに参加したスミフル従業員、ダニー・バウティスタさん(31)が銃撃され死亡。他の従業員2人も別の日に銃撃され、1人が負傷した。ディソン代表の自宅は11月28日に放火された。同日は早い段階で消し止められたが、今月15日未明に再び放火され全焼している。

 火災の負傷者はいなかったが、ディソン宅はスミフル労組の事務所も兼ねており、これまでの従業員のタイムカードなど裁判資料として使っていた書類などが全て燃えた。

 大使館前での抗議の後には、スミフル比の首都圏事務所が入居しているとされるビル前でも抗議を実施。通行人に現状を訴えた。

 正規雇用まで帰らない

 

 スミフル従業員はコンポステラバレー州のバナナ農園や梱包(こんぽう)工場で働いており、正規雇用化を求めて10月からストを実施。11月末からは中央政府に現状を訴えるために首都圏入りし、マニラ市内のキャンプで寝泊まりしながら抗議活動を続けている。

 非正規雇用で9年間働く女性従業員ジェラメ・ロペスさん(36)は「スミフルが正規雇用化するまでミンダナオには帰らない」とし「クリスマスも年末年始もマニラで過ごす。私たちはそれだけの覚悟でマニラ入りしている」と涙をぬぐいながら語った。

 労組が労働長官と対話

 従業員らは17日にもマニラ市の労働雇用省前で抗議活動を行い、労組代表がベリョ労働雇用長官と1時間半にわたり面会した。従業員らは長官に、正規雇用化を求めるストの実施と従業員殺害などの被害を伝えた。長官は27日に同省でスミフル比の幹部と従業員、長官の3者で話し合いの場を持つことを約束した。またミンダナオ地方が戒厳令下にあることを踏まえ、長官は「現地の軍や警察に対し、従業員への嫌がらせを止めるよう文書を書く」とも述べたという。

 住友商事広報部はまにら新聞の取材に「スミフルの株主として、状況を注視していきたいと考えている。また、対話を通じて相互の理解が進ちょくすることを期待している」とコメントした。

 スミフルは旧名「住商フルーツ」でスミフル・フィリピンには住友商事のほかスミフル・シンガポールなどが出資している。(冨田すみれ子)

社会 (society)