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10月22日のまにら新聞から

息子探す母に救いを 活動家拉致事件

[ 642字|2017.10.22|社会 (society)|新聞論調 ]

 首都圏ケソン地裁は今月12日、2007年に左派系活動家、ジョナス・ブルゴス氏失踪に関与したとされた国軍のバリアガ少佐に無罪を言い渡した。母のエディタ・ブルゴスさんにとってはどれほど悲痛な瞬間だっただろうか。

 「フィリピン農民運動」(KMP)の一員だったブルゴス氏は、07年4月28日、武装した男女5人組により拉致された。後に国家警察と家族は、犯行に使用された車が国軍部隊の所有だったことを突き止めた。捜査を指揮した警視正は直後に左遷された。

 それからというもの、ブルゴス氏の家族は救出の嘆願、法廷での聴聞会、証人喚問、捜査とジェットコースターのような日々を送る。ついに13年には、アキノ前大統領が司法省や国家捜査局までもが加わる徹底した捜査を命じた。

 しかしいまだ、ブルゴス氏は見つからない。捜査や聴聞会が続く中、今月12日には容疑者に無罪が宣告され、事件解明は暗礁に乗り上げた。

 判決の後、無罪となったバリアガ少佐はブルゴス氏の母エディタさんの方へ歩み寄った。バリアガ少佐は捜索への協力を申し出ただろうか。両者にとって心地いい対面ではなかっただろうが、そこに少しでも希望の光が差したらと願う。

 少佐でなくとも、誰かが事件解決のために尽力しなくてはならない。拉致したのは誰か、ブルゴス氏は生きているのか。正しいことをするにはまだ遅くはない。夫と死別し、行方不明の息子を探し続けるエディタさんの、心の重荷を軽くするため、真実を明らかにしてほしい。(19日・スター)

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