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11月7日のまにら新聞から

RAA「来年上半期にも承認」 上院議長が見通し示す

[ 1123字|2023.11.7|政治 (politics) ]

条約承認権をもつ比上院の議長が「RAAは来年上半期までに締結」との見通し示す

 ズビリ上院議長は6日、CNNフィリピンのインタビューで、3日の比日首脳会談後に正式な交渉の開始が宣言された訪問部隊の法的地位を定める比日円滑化協定(RAA)について、上院が「来年上半期には承認しているだろう」との見通しを示した。比で条約の承認権は上院が有している。

 比日RAAを巡っては、ピメンテル上院野党院内総務が5日に「日本の軍事施設を比国内に設置してほしくない」と懸念を表明。また、米比訪問軍協定(VFA)下で発生した米兵による比人女性に対する不同意性交事件(05年)、トランス女性に対する殺人事件(14年)で、米兵がVFAに保護され十分な処罰が科されなかったという不満が残ったことから、比日RAAでも同様の事態が発生しないかという疑念も呈されている。

 そうした懸念に対し、ズビリ議長は「RAAは(米軍利用可能施設の比国内設置を可能にする)比米防衛協力強化協定(EDCA)のような内容はなく、両部隊間の相互訓練と相互運用性に関する協定だ」と説明。さらに「自衛隊は世界一規律のある部隊の一つ。日本からの訪問部隊が比国内法を犯すような問題は起こらないだろう」との考えを改めて示した。

 また、日本と訪問部隊の地位に関する協定を取り結ぶアイデアを提起したのは「自分の事務所だ」と発言。その理由について「日本が提供するレーダー、船舶を使いこなすには日本との共同訓練が必要だからだ」と説明した。

 ▽一部左派は反発

 進歩派女性政党ガブリエラは声明で、比日RAAへの反対を表明。ズビリ議長らに対し「皆が歓迎している日本部隊は、戦時中に比に慰安所を作り、何千という比人女性をレイプした日本軍と同じだということを忘れてはいけない。戦時中の比人女性への残虐行為に謝罪をしていないのに、どうして『規律がある』などと呼べるのか」と批判した。

 進歩派政治団体・新愛国主義同盟(バヤン)は声明で「RAAは米軍と共に日本の部隊が比国内で軍事演習を行うことを可能とするVFAの一種。日本が米国の従属的パートナーとなり、比が米国の『戦争装置』の歯車として機能している現在、この協定は米国の安保ネットワークの一部となる」と主張。RAAの目的について「対中防衛目的との見方が広がっているが、その実態は地域における米国の覇権強化だ」とした。

 日本政府は95年から07年にかけ、フィリピンを含む講和条約によって賠償請求権を放棄したアジア諸国の元慰安婦の女性に対し、官民で作る「アジア女性基金」事業を通じて、歴代首相名での「お詫びの手紙」の送付、日本国民からの寄付を原資とする「償い金」の支払い、政府予算からの医療・福祉支援を実施している。(竹下友章)

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