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7月16日のまにら新聞から

来月マニラで再開へ 南シナ海COC締結交渉

[ 1213字|2023.7.16|政治 (politics) ]

来月フィリピンで南シナ海行動規範(COC)締結のための交渉が再開される見通し

 東南アジア諸国連合(ASEAN)外相会議に参加したマナロ外相はこのほど、南シナ海での領有権・管轄権を巡る紛争を回避するためのASEAN・中国間のルールである「南シナ海行動規範」(COC)締結のための会合が来月、フィリピンで再開される見込みだと明らかにした。CNNフィリピンが報じた。

 13日に開かれた中国ASEAN外相会議では議題の一つとしてCOCが取り上げられ、COC草案の第2読会も行われた。その席でマナロ外相は「平和、安全、安定に対する脅威や大国間対立によって、われわれ共通の利益が害されないようにしなければならない」と演説。「南シナ海における紛争には、国際法に従った効力のある管理と平和的な解決が必要だ」と訴え、COC交渉目的の会合を8月にフィリピンで開催することに期待を表明した。

 同会議に、中国代表で出席したのは外相に当たる秦剛外交部長でなく、より高位の王毅共産党中央政治局委員。同日開催された日本ASEAN外相会議では出されなかった共同声明も採択され、「早期のCOC締結に努める」との文言が文書に盛り込まれた。また、COC交渉を進めるガイドラインにも合意がなされた。

 2002年にASEANと中国は沿岸国に自制を求める南シナ海行動宣言(DOC)を採択したが、法的拘束力がなく実効性に欠けた。そのため2013年のASEAN拡大国防省会議からより拘束力のあるCOCの策定に向け交渉を開始し、17年の中国ASEAN外相会議で枠組み合意したが、その後交渉は停滞、棚上げ状態となっていた。

 ▽平和的共同管理なるか

 COCの下敷きになると考えられるDOCの第5条には、領有権・管轄権問題が平和的に解決されるまでの間、海洋環境保護、海洋科学調査、捜査救助活動などの分野での共同活動を実施できるとの定めがある。国連海洋法条約(UNCLOS)第56条は、海洋環境の保護および保全、海洋の科学的調査を沿岸国の管轄権の一部と規定する。DOCは、問題が解決するまで事実上管轄権を共有し主張の対立のある海域を共同管理することができる枠組みとなっている。

 同規定に基づき2005年には比中越3カ国でそれぞれの石油公社が南シナ海で埋蔵石油予備探査も兼ねた地震学的調査を行うことで合意し、一部実施された。しかし、この共同調査には国内で違憲審査を求める訴訟が提起され、今年1月、「天然資源の探査、開発、利用は国家の完全な管理下に置き、排他的経済水域(EEZ)含む比の海域の資源は比国民のみが利用・享受する」ことを定める比憲法第12条に抵触するとして、最高裁が違憲判断を下している。

 水産資源や海底鉱物を含む海洋天然資源の探査、開発、管理は沿岸国の「主権的権利」だとUNCLOSに定められるが、現行憲法下では、南シナ海沿岸国の共同活動の内容が比の主権的権利にまで及ぶ場合に実施が極めて難しくなっている。(竹下友章)

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